孫崎享が『戦後史の正体』に書いたことと書かなかったことを指摘するのは、著者・孫崎の執筆意図を明らかにするために有用だろう。 私は既に、吉田茂、鳩山一郎、岸信介の3人の政治家の日本国憲法に対するスタンスに孫崎が触れなかったことを、宮崎学の著書『安倍晋三の敬愛する祖父 岸信介』(同時代社, 2006年)と対比しながら述べた。 下記は孫崎が石橋湛山を評価した部分の記述。 石橋湛山は戦前、軍部に対し、きびしい警告を行っています。 戦前、日本の軍部が暴走した背景に統帥権(とうすいけん)という問題がありました。大日本帝国憲法に「天皇は陸海軍を統帥す」とあることから、軍事面における権限はすべて天皇と天皇を支える軍部がもっており、内閣はそれに干渉できないという考えです。 軍部はこの統帥権をたてにとり、暴走をくり返しました。そのひとつがロンドン海軍軍縮会議において、政府代表が海軍の削減に合意したのは統帥権違