岩手県出身のアーティスト・カンザキイオリさんは、活動10周年を迎えた。ボーカロイド(合成音声)の曲を作る「ボカロP」として創作キャリアを重ね、生と死、若者の不安や葛藤、ままならぬ世界への叫びを鮮烈に作品へと昇華。代表曲はNHK紅白歌合戦でカバー歌唱もされた。近年は小説執筆に取り組み、8月には3作目を刊行。表現の幅を広げている。 動画サイトへの楽曲投稿を始めてから10年。「本当に早かった。一年一年大きなことをやってきた気もするが、タイムスリップしたような不思議な感覚」と振り返る。 新作小説は「自由に捕らわれる。」(河出書房新社)。主人公の高校生姿夜(すがや)はある日、年上の友人琥太郎の遺体を発見する。次第に明かされる事件の真相、家族の闇、琥太郎の正体。生と愛を痛切に描く。サスペンスだが、個々の懊悩(おうのう)に迫る家族小説であり、学友との青春小説でもある。ライトノベルの情調が時折漂い、そこに