杉林(すぎばやし)家のダイニングキッチン・二〇二〇年春 夫の茂(しげる)(36)、妻の花(はな)(33)、長女の舞子(8)が朝食のパンを食べている。 茂 「へっくしょん」 舞子 「くしゅん」 花 「二人とも花粉症ひどいわねえ。そうだ! 明日からパンやめて、ご飯食べよう。ご飯」 茂、舞子 「ご飯?」 花 「お向かいのご主人もご飯で花粉症治ったんだって。コシヒカリだからおいしいよ」 茂、舞子 「???」 ◇ 将来こんな情景が現実になるかもしれない。 国民の二~三割が悩むスギ花粉症。現在普及しているのは抗ヒスタミン剤などを服用してアレルギー症状を抑える対症療法。毎春、薬を飲む必要がある。医療費は年二千三百億円程度とされ、家計にも国の財政にも負担となっている。 農業生物資源研究所(茨城県つくば市)が研究するのは一度治せば花粉を浴びても発症しなくなる原因治療(根治治療)だ。 コシヒカリの遺伝子に花粉