エヌ氏の一日は、「いいね!」ボタンをクリックすることから始まる。 「いいね!」ボタンは、エヌ氏が参加している仮想世界上の友達の日記やひとりごとつぶやき機能についているお手軽評価ボタンのことだ。 エヌ氏の友達は、熱心に仮想世界上の日記に日々のできごとを綴っていた。 朝ごはんに食べたもの、今いる場所、気がついたこと、天気のこと、猫や花の写真とありとあらゆるものが仮想世界上の日記としてほぼリアルタイムに書き込まれていた。 エヌ氏は仮想世界上の友達との友好的なコミュニケーションを円滑に果たすために、早起きしてエヌ氏が就寝してから起きるまでの間に書かれた日記にたいして、「いいね!」ボタンを次々と押していった。 本来は、どういうふうに「いいね!」なのかを感想コメントとして残すべきなのだが、何せエヌ氏が読まなければならない日記の量は膨大で一日のうちのかなりの時間をそれに費やしていた。そんな状態だったので