海部 美知 エノテック・コンサルティングCEO ホンダ、NTT、米ベンチャー企業を経て、1998年にエノテック・コンサルティングを設立。米国と日本の通信・IT(情報技術)・新技術に関する調査・戦略提案・提携斡旋などを手がける。シリコンバレー在住。 この著者の記事を見る
ソフトバンクがお買いもの三昧だ。イー・アクセスに続き、米国第3位の通信事業者スプリント・ネクステルへの70%出資を発表した。その後、イー・アクセスへの出資比率を下げると発表するなどのドタバタもあり、日本ではもっぱら、周波数政策との関係や、財務的に買収資金が調達可能か、といった点に興味が集中しているようだ。 一方、この一件を太平洋の対岸から見ると、また少々違う面白さがある。スプリントの顔であるダン・ヘッセCEO(最高経営責任者)の企業再建物語に、まずは注目してみよう。 ヘッセとAT&Tの因縁の対決 昨年、米国通信業界では、業界再編を巡る大騒動があった。詳細は昨年12月27日の当コラムをご参照いただきたいが、簡単に言えば、業界2位のAT&Tが4位のTモ-ビル(加入者数順位)を買収しようとして、失敗したのである。 放置すればTモービルがいずれ破綻するのは目に見えていたため、米政府の独占禁止当局は
「違法ダウンロード刑事罰化(罰則化)問題」というタグの付け方が、もしかしたら、すでに失敗だったのかもしれない。このネーミングの行く先には 「違法なら罰則があって当然じゃないか」 という感じの早呑み込みが待ち構えているからだ。 たしかに、普通の日本人の日常的な言語感覚からすれば、違法な行為に罰則が科されるのは極めて自然ななりゆきに思える。 それどころか 「違法無罰とか、むしろそっちの方がありえないんじゃないか?」 ぐらいな先走りさえ考えられる。 「つまり、津田っちは違法堂々みたいな世界を望んでるわけだな?」 「というよりも、イリーガル天国で脱法フリーダムなやりたい放題のインターネット社会を構築することが、ああいう連中の望みなわけで、結局のところ、金髪津田野郎一派は、既存の社会的枠組みを破壊したい分子なわけですよ」 と、まあ、ここまで決めつける向きは少数派だろうが、それでも、最初に「違法」と言
楽天は5月17日、米国で3位に位置づけるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)運営会社、米ピンタレストへの出資を発表した。ピンタレストは2010年3月にサービスを開始した写真特化型のSNS。インターネット上から収集した写真を軸に利用者間でコミュニケーションを図る。開始から2年で約1800万人の利用者を持つ。今回、ピンタレストが第三者割当増資により調達した金額は1億ドル(日本円で80億円)で、楽天はその一部を引き受ける形で出資した。 ピンタレストはツイッターやフェイスブックと比べると日本での知名度は低い。しかし、米国の有力投資家たちがこぞって出資したがっている成長株、それがピンタレストだ。この出資に楽天が成功した理由は何か。同社の三木谷浩史会長兼社長が独占インタビューに答えた。 コボの買収のときは「ホームラン」って言ったけど、今回は「極上のシーズニング」を手に入れた感じ。いや、「秘
日本のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)業界を牽引してきたミクシィが身売りを検討していることが明らかになった。社長の笠原健治氏が保有する約55%の株式について、売却に向けた交渉への参加を複数の企業に打診し始めた。近く行われる入札にはグリーやDeNA(ディー・エヌ・エー)といった競合他社などが参加する見通しだ。 ある金融筋は「今春、ミクシィから競合他社に株式売却の話が持ち込まれた」と証言する。笠原社長の意を受けた証券会社が株式の売却を持ちかけたといい、「第一段階では笠原社長の保有株式の一部を譲渡して資本提携し、その後、将来的に全株式を放出する案が示された」と続ける。 ミクシィが身売りを検討するのは、今回が初めてではない。過去に一度、ヤフーとの間で資本提携が実現まであと一歩のところまで進んだことがある。両社の交渉は2011年2月末にプレスリリースを配信する直前まで進んだが、最終局
気になる記事をスクラップできます。保存した記事は、マイページでスマホ、タブレットからでもご確認頂けます。※会員限定 無料会員登録 詳細 | ログイン 自転車がブームだ。「健康によい」「環境にやさしい」「交通渋滞や駐車場不足を緩和する」と、多くの国で官民あげて自転車の普及に乗り出している。世界保健機関(WHO)は、世界の死亡原因は「運動不足」が喫煙に次いで2番目だとして自転車利用を推奨する。だが、近年自転車は男女とも性器への影響が大きいとする警告がいろいろと報告されている。自転車は結構ずくめではないらしい。 人気をよぶ自転車 英国で自転車や徒歩の移動を推進する団体「サストラン」は、自転車は購入などに1を投入すると、医療費や交通費の削減など20倍の恩恵が得られるという報告書を発表した。自転車は徒歩に比べてエネルギー効率は3~4倍も高く、速度は4倍も速い。とくに、最近のガソリンの値上がりも、ブー
技術が日々革新し、目まぐるしく事業環境が変わる米シリコンバレー。その混沌の中で、いかに起業の成功「確度」を上げるか。リース氏は、この古くて新しい難題に取り組むための考え方を本書に示した。昨年9月に米国で出版され、全米のベストセラーとなっている。 その要諦を端的に言えば、短い周期で仮説構築と検証を繰り返しながら、顧客のニーズを満たす製品・サービスを探り当てていくマネジメント論だといえる。 顧客の反応をみながら製品を磨く 顧客のニーズを予想し、長い期間をかけて準備した万全のサービスが、さっぱり受けなかった…。起業経験者や、新規事業開発担当者なら、一度はこうした経験があるだろう。本来なら、その失敗から学び、顧客のニーズを再検証した上で次のサービスにつなげていくべきなのだが、大抵の場合、起業やプロジェクトは、その時点で終了してしまう。自らもこうした失敗体験を持つリース氏は、従来のこのサイクルに疑問
復興需要もあって個人消費に雪解けムードが広がってきました。東日本大震災で消費自粛の嵐に襲われたことが嘘のようです。一方で大事なものが「風化」しているような違和感が拭えません。 少子高齢化、内需縮小、デフレという重石は、なお日本経済にずっしりとのしかかっています。震災による需要収縮は近未来の日本の消費構造を先取りする形での、企業、とりわけ構造転換の主役と期待されるサービス産業への過酷なテストだったとも言えるでしょう。 日経ビジネスオンラインで連載した「究極のサービス~震災に負けない人々」が大きな反響を呼んだのも、一足早く危機を乗り越えた企業の取り組みに将来へのヒントを読者が感じ取ったからかもしれません。 連載の著者、内藤耕さんはここにきて、「当時の危機感が喉元を過ぎ去ったような空気を感じる」と言います。編集部では2月16日、連載で取り上げた老舗旅館の湯主一條に、内藤さんのほか、サービスの達人
東日本大震災によって「絆」や「生き方」が見直されるようになった。同時に「仕事」や「働くということ」についても考え直す人が増えている。「働きがい」はこれまで以上に重みを増していると言える。日経ビジネスで2007年以降、発表している「働きがいのある会社」調査。今年も1月23日号で、震災直後に調査を行った2012年版の結果を掲載した(購読申し込み)。今回の連載では、最新のランキング結果に加えて、グーグルやサイバーエージェントなど上位企業に見られる特徴をまとめた。「働きがいのある会社」と評価を受ける企業は何をしているのか。調べていくと、3つのカギが浮かび上がってきた。 働きがいのある会社を作ろうと努力している経営者は少なくない。だが、人の心は十人十色。万人が満足する企業風土を作り上げるのは並大抵のことではなく、仮に実現したとしても、業績悪化や社内制度の変更などでたやすく失われてしまう。そんな脆くて
気になる記事をスクラップできます。保存した記事は、マイページでスマホ、タブレットからでもご確認頂けます。※会員限定 無料会員登録 詳細 | ログイン 東日本大震災で出た膨大ながれきの1割強が、津波に引き込まれて太平洋に流れ出した。これが海流に乗り風に流されて太平洋を漂流している。これから各地の海岸に漂着して、さまざまな国際問題を引き起こしそうだ。地震直後には太平洋の島々、北米、南極にまで津波の影響がおよんだが、代わってがれきになり、さらにその後を追って原発事故による放射能の海洋汚染が太平洋中に拡散しつつある。巨大地震の影響はまだまだつづく。 300万tの津波がれき 国立環境研究所などは、東日本大震災で発生したがれき約2500万トンのうち、約300万トンが津波に運ばれて太平洋に流出したと推定している。10トン積みの大型ダンプカーにして30万台分である。 津波がれきは予想以上の速度で漂流してい
前回のコラムで、「Hulu(フールー)」などのネット映像配信の価値は、「配信」の部分でなく、検索・過去履歴・オススメ・ソーシャルなどといった「ネット独特のインテリジェンス」にある、ということを書いた。 このようにウェブの世界は、クラウドの中に存在するあらゆるデータを燃料として「インテリジェンス」を作り出す巨大な「発電所」の顔を持つ。そして、それを支える技術が、最近話題の「ビッグデータ」だ。 ビッグデータとは、膨大な量のデータを処理・分析し、その結果を業務に活用する仕組みのこと。金融など、定型的なトランザクションデータが膨大に発生する業界では、従来から自社内でそのデータを処理・分析して、株価の予測やオプション取引の価格づけなど、さまざまな目的に活用していた。 ところが、「ウェブ2.0」「クラウド」「ソーシャル」といった一連のネットの進化の中、ユーザーが生成するデータの増加、コンテンツのデジタ
昨年10月の騒動勃発以来、一躍世界で最も注目される日本企業になってしまった観のあるオリンパス。 事件の幕開けはマイケル・ウッドフォード社長(当時)の突然の解任だったが、筆者は、米英の主要メディアの報道を見ていて「解任」を表現する単語の多彩さに気がついた。 たとえば主要紙の第1報の見出しはこうだ。 Olympus Removes Michael Woodford as President (ウォールストリート・ジャーナル電子版、10月14日) In a Culture Clash, Olympus Ousts Its British Chief (ニューヨーク・タイムズ、10月15日) Sacked Olympus chief had sought answers to over $1bn in payments (フィナンシャル・タイムズ、10月15日) このほか記事本文中の表現も含めると
携帯電話事業参入から5年。キラー端末である米アップルの「iPhone」と、格安な通話メニュー「ホワイトプラン」で常に加入者獲得でトップを走ってきたソフトバンクに転機が訪れている。今年10月、ライバルのKDDIが「iPhone 4S」の販売に参入し、ホワイトプランもようやく他社に追随されはじめた。一方で、震災後のエネルギー政策の混乱を目の当たりにして、電力事業への進出を表明するなど、話題の提供にも事欠かない。 孫正義社長率いるソフトバンクはこれからどんな針路を取るのか。日経ビジネスは11月21日号で特集「ソフトバンク~孫正義、試される突破力」を組み、次の一手を探った。 この企画と連動し、今日から3回にわたり、2時間近くにわたる孫社長へのインタビューの詳細をお伝えする。 いま最も注目を集める経営者の視線の先にあるものは? (聞き手は山川龍雄・日経ビジネス編集長) ―― ソフトバンクが独占販売し
Huluは、アメリカの主要地上波テレビ局(Fox・NBC・ABC)などが出資する合弁会社。親会社のコンテンツを中心に、テレビ番組や映画をネット配信している。 アメリカでは、ユーザーは無料視聴で、番組の前や途中でCMが入るのが基本。これに特典のついた有料プランも別立てである。コンテンツの品揃えも料金体系も画面のインターフェースも、日本のものとはかなり違う。 アメリカのテレビ業界は既存プレーヤーと新参者が入り乱れて混沌状態が続いている(関連記事:米国版・荒野の西部劇「テレビ酒場の大乱闘」)。そんな中から台頭し、「テレビ視聴の習慣を一変させた」と言われるHuluとはいったいナニモノなのか。テレビの事情に詳しい専門家、「我が家のティーン息子」の行動をサンプルとして、アメリカでの状況を観察してみよう。 「ユーチューブ対策」から始まったHulu 2006~2007年頃、テレビ番組の録画がユーザーにより
「エンディングノート」をご存じだろうか。人生の後半に直面するお金や暮らしの問題について、自分の考えを整理するためのツールだ。家族や周りの人に自分の考えを伝え、いざという時に役立ててもらう“プレゼント”にもなる。 葬儀とお墓のスペシャリスト、佐々木悦子氏に、エンディングノートの書き方、役立て方を解説してもらう。 筆者はNPO法人(特定非営利活動法人)ライフデザイン研究所に勤務し、年中無休で6500人近い人々の葬儀や墓の相談に乗り続けてきた。“終活”――人生の終末期を自分らしく過ごすために生前から準備すること――をする相談者に「なぜ終活をするの?」と尋ねると、こんな2つの答えがよく返ってくる。1つは「子供に迷惑をかけたくない。だから、できるだけ葬儀費用を抑えて簡素に」。2つ目は「独り暮らしで後を見てくれる人が居ないから」。 百数十カ所に及ぶ役所を訪ね歩いたが、どこにも、エンディングまで見据えた
小田嶋隆さんと濱野智史さんの対談シリーズも大団円に入りつつある5回目となりました。 「フェイスブック」の実名性と「ミクシィ」の匿名性。日本でミクシィが流行って、フェイスブックがまだそこまで普及していないことの背景にあるのが、この実名性と匿名性という特徴だ、というのは、よく耳にする議論です。 でも、濱野さんに言わせれば、「フェイスブックだろうが、ミクシィだろうが、大した違いはない」とのこと。「日本人の『世間』的なコミュニケーション作法が変わらない限り、いずれは同じ仕組みに落ち着いていくだろう」とまで言い切っています。 今回は、この日本特有と言っていい「世間」とソーシャルメディア、そして、アニメやマンガなどのおタク文化との関連について語っていただきました。「クールジャパン」が世界で評価を受けたのも、この「世間」力があったからとも。 この「世間」の正体とは――。小田嶋さんと濱野さんが読み解いてい
この記事を書いている時点で、3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震からちょうど1週間が経ちます。 たった1日でこれほど色んなものが変わるのかと思うほど、今回の地震やそれに伴う様々な被害は私たちの価値観を大きく変えてしまいました。そんな中、個人的にかえって明確になったと考えているのが、ツイッターやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、ブログなどのソーシャルメディアの限界と可能性です。 まだ、今回の震災を総括するには早すぎるタイミングかもしれませんが、現在進行形で見えてきているソーシャルメディアの限界や可能性についてまとめてみたいと思います。 ソーシャルメディアの限界その1:回線がつながらなければ無意味 まず、あまりにも当たり前の話ですが、今回改めて明確になったのが「いくらソーシャルメディアがインフラになった」と言っても、その下で動く通信網が落ちてしまえば無意味ということです。
「ねえ、テレビ持ってる?」 米国人の友人に、初めてそう聞かれた時は、面食らった。日本ではどんな貧乏学生だってテレビは持っている。 もちろん、持ってますよ。しかし、この質問が多いこと。 実は、米国の若者や学生は、アパートを借りてもテレビを買う人が少ない。しかも、ケーブルテレビ(CATV)を契約すると、月額数十ドルという視聴料がかかる。そんな余裕のある若者はあまりいない。 だから、テレビを持っている友人を見つけたら、押しかけて人気番組を一緒に見よう、というわけだ。 テレビドラマをスタバで見る ところが、その質問がすっかり聞かれなくなった。 なぜって、今ではテレビの人気番組は、オンライン上で無料で見られるからだ。日本の主要民放にあたる米ネットワークテレビ局の番組だけでなく、ニュースやドラマの専門チャンネルの番組まで視聴が可能だ。 だから、「あー、まずい。見逃した!」という人気ドラマやリアリティー
「フェイスブック元年」 日本ではそう言われているらしいが、こちらニューヨークでは、もう完全な「インフラ」になってしまった。 初対面の人と会って、「また連絡を取りたい!」と思ったら、メールアドレスを聞くのではなくて、まずフェイスブックにアカウントがあるのか確認する。 マンハッタンの地下鉄や、スタンドで売っている雑誌の企業広告でも、企業が記載しているのは、もう自社のウェブサイトではなく、フェイスブックのファンページだ。 フェイスブック追撃の新メディア続々 最近では送受信するメールの数がめっきり減ってしまった。逆に、フェイスブックのメッセージは増え続けている。人を集めてパーティー!と思ったら、マスメール送信なんてやらない。フェイスブックでシェアした方が、よっぽど効果的に人が動員できる。 ニューヨーカーは「インフラ化」したフェイスブックが当たり前の存在となって、飽きてきている。 「次に面白いものは
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