版元といえば、いまでは出版社を指す。しかし江戸時代は「出版」「印刷」「販売」をすべて統括する存在だった。中でも大手だったのは「須原屋」。印刷博物館(東京都文京区)で開かれている企画展「印刷都市東京と近代日本」で、その足跡をたどってみた。 「当時の版元は本の総合プロデューサーでした」。同館の川井昌太郎(しょうたろう)学芸員はそう解説する。作者から原稿をとってきて筆耕に清書をさせ、彫り師に製版を、摺(す)り師に印刷を発注し、製本して完成。自ら書店も開き、そこで販売もしていた。 川井氏によると、江戸の観光ガイド『江戸買物独案内』には62の版元を含む160の出版・印刷関連業者の名がある。『江戸名所図会』(1834年)にも、版元の店先が客でにぎわう様子が描かれたという。 『江戸の本屋さん』(故今田洋三氏著)によると、須原屋は江戸後期には12軒に上った。本家の須原屋茂兵衛(もへえ)は9代続き、幕府から
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