A005と同様、小野がヒットに導いた製品は少なくない。開発部長時代の1992年、「こんなものをつくるのは無理だ」という反対を押し切って、小型の「高倍率ズームレンズ」を開発。広角から望遠までの機能を集約したこのレンズは、今やタムロンの代名詞的存在である。 鬼の創業社長から薫陶 取締役から2段階降格 小野は異色の経歴を歩んできた。自動車ワイパー製造会社を経て、26歳当時の74年、タムロンに中途入社。職業安定所の紹介だった。 「つてもまったくなかった。レンズを手掛けている会社ということも知らなかった。前職は仕事がなく暇だったから、仕事をしたくて。タムロンは仕事がいっぱいあるということで、職安が紹介してくれた。カメラが好きだし、ちょうどいいや」。 そんな安易な気持ちで臨んだ面接。だが、そこに待ち構えていたのは、創業社長の新井健之(故人)だった。開口一番、ピシャリと放たれた。「君はウチの会社に来ても