明日から新しい年だが、晴れがましい気分にはなれない。また一つ年を重ねるのかと何やら恨めしい。不安やら理不尽といった感情表現が、政治やジャーナリズムで今年ほど繁(しげ)く用いられたこともなかったのではないか。震災、放射能への不安、尖閣、竹島、国後への周辺国による挑発の理不尽、などである。 ≪感情的表現で政治語った年≫ 不安や理不尽といった感情表現で政治を語っていいのか。政府文書の中にも「安全・安心」がやけに多い。「安全基準」はある。社会には最低限、定めておかねばならない基準値(リスクミニマム)が存在するとの設計思想である。しかし「安心基準」というものはない。安心は個々の人間の観念の中には存在するが、現実の社会にこの観念を持ち込んでは危うい。 安心はこれを求めつづければ、「絶対安心」という、人間社会にあってはおよそありえないものへの渇望に人々を誘う。実現不可能な観念の追求は、行き場のない閉塞(