「彼女が犯罪にかかわっているという大前提、ストーリーが事実ではない。話自体が『壮大な虚構』と思える」 検察の証人に呼ばれたはずの厚生労働省元部長、塩田幸雄(59)がかつての部下だった元局長、村木厚子(54)をかばう証言をしたのは、郵便不正事件の公判が始まって間もない2月8日のことだった。 大阪地検特捜部の取り調べには、参院議員の石井一(76)から電話を受け、村木に便宜を図るよう指示したと「供述」している。法廷ではその内容を「想像で答えた」と真っ向から否定した。裁判の局面が変わった瞬間だった。 検察幹部は「調書のやりとりは細かい。想像のはずがない」と一蹴(いっしゅう)したが、取調官の誘導や脅迫があった−として供述を覆した証人は11人中8人にのぼった。裁判所は調書43通のうち実に34通を証拠として認めず、検察内部からは、すでに無罪を覚悟した発言も聞こえてくる。