日中戦争で旧日本軍が多くの中国人を虐殺したとされる「南京事件」。その犠牲者数について、日本史教科書の最大シェアを誇る山川出版社が、今年3月の高校教科書検定で、中国政府が主張する30万人説を「誇大」と否定した。河村たかし名古屋市長は2月、虐殺自体を否定して物議を醸すなど、70年以上たった今も論戦が続く。国内では「大虐殺派」が主流だったが、過去十数年の研究では「事件否定派」と「中間派」が勢いを増している。 「学者のあいだでは、30万人説は誇大な数字と考えられている」 山川出版社は3月、日本史Aの教科書で、こう記述して文部科学省の検定を合格した。6冊のうち4冊が「30万人」「20万人」といった従来通りの誇大な数字を記述する中、「数字の評価に踏み込む異例の記述」(文科省幹部)だった。 執筆した鳥海靖・東大名誉教授は「かつて学者の中には30万人説を唱える人がいたが、近年の学会では誇大だということが常