1カ月ほど前のコラムで、丹羽宇一郎駐中国大使に対して「やめなさい」と書いたら、「久しぶりに快哉(かいさい)を叫んだ」とのファクスを頂いた。差出人は意外な人物だった。 ▼元倉敷紡績専務の佐伯秀穂(ひでほ)さんは、もともと外務官僚の上層部に民間ビジネスマンを起用すべきだ、と主張してきた。伊藤忠元社長の丹羽氏が、中国大使に決まったときも、「まことに頼もしい」とエールを送っている。 ▼二等兵として終戦を迎えた佐伯さんは、東大に復学して、マッカーサー司令部のスタッフによる出張講義で英語を学んだ経験をもつ。入社後は、一貫して輸出業務に携わってきた。五大陸60カ国以上で、いかに激しい商戦を繰り広げてきたかは、今年5月に上梓(じょうし)したばかりの『海外営業マン ドサ回り奮闘記』(慧文社(けいぶんしゃ))にくわしい。 ▼なかでも痛快なのが、1972年にニューヨークの一流ホテルで現金700ドルを盗まれたとき