自虐に傾いた世論覆す一石 毎年2月に沖縄では戦没者遺骨収集が行われ、多くの学生が参加している。収集奉仕の後、沖縄戦を指揮した牛島満・第32軍司令官が自決した壕(ほり)の前で御霊(みたま)を追悼するため学生全員で摩文仁(まぶに)の丘に向かう。戦争を知らない世代だが、毎年多くの学生が壕の前で合掌しながら涙を流す。沖縄戦を戦った元兵士の阿波根(あはごん)昌信氏(89)は「牛島大将の人柄の良さは、海軍の間でも評判でした」と語ってくれた。 本書はその牛島満の生涯を描いた大作だ。沖縄戦を中心に語られることが多い牛島だが、本書では幼少・青年時代にも重きを置いている。体が大きく率先力に満ち、親しみをこめて「うどさあ(うどの大木)」と呼ばれた幼少期。西郷隆盛と同じ加治屋町出身で、おおらかな性格から「軍服を着た西郷さん」と尊敬された若き軍人時代。中国戦線では捕虜の少年が牛島の世話をするうちに懐(なつ)き、軍と