桜前線が北上を続けている。福島県の人たちは、ことさら開花が待ち遠しいはずだ。福島第1原発事故以来の風評被害をはね返す切り札として、NHK大河ドラマ「八重の桜」が期待されている。 ▼満開の桜は、幕末の会津に生まれた新島八重の魅力と相乗効果を生むに違いない。いわき市ではさらに、やはり幕末を生き、今年生誕200年を迎える地元の偉人の顕彰に努めている。その名を片寄平蔵(かたよせへいぞう)という。 ▼愛知県沖の海底の地層から先週、世界で初めてガスの採取に成功したメタンハイドレートは、「燃える氷」と呼ばれる。平蔵が現在のいわき市内で掘り出したのは、「燃える石」、つまり石炭だった。黒船の来航を目撃した平蔵は、蒸気船の燃料が石炭だと聞き、かつて知人から聞いた黒い石の話を思い出した。燃やして、たき火をし、けものを追い払ったものだ、と。 ▼材木商の仕事の合間に山々の探索を続けた平蔵は、3年後に石炭の地層を発見