亡くなる1カ月前、かつて「軍国教師」だった内藤美代子さん(享年94)は、娘にこう言ったそうです。「怖いわ。まさかこんな時代が二度と来るとは思いませんでしたわ。(戦前と)似てるわ」▼それから2年余。内藤さんの手記が、このほど同僚記者である娘さんの手によって出版されました。『いのちへの誓い』。副題に「軍国教師だった私が遺(のこ)したいこと」とあります▼日中戦争が始まった翌年の1938年、尋常高等小学校へ赴任した内藤さん。小学生の頃は、大正デモクラシーの高揚の中、『赤い鳥』や『コドモノクニ』を読む、よく考える子どもでした。それが師範学校を経て、「疑うことをやめ、言われるままに教科書通りを一言一句のまちがいもなく教える」無思考の教師に▼何がそうさせたのか。個人の歴史から日本の教育が軍国主義に加速する歩みが見えます。「忠君なくして愛国はなく、愛国なくして忠君はない」と説く『国体の本義』で、皇国思想を
![きょうの潮流 2014年6月29日(日)](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/8510216a130e7d5e9d1c2a4860958f4849328594/height=288;version=1;width=512/http%3A%2F%2Fwww.jcp.or.jp%2Fakahata%2Fweb_img%2Fakahata-kakusan.jpg)