2018年もいろんな本を読んだ。 ちょうど1年前の年末年始にかけて読んだのはゲーテの『ファウスト』(書評)だった。19世紀初頭に書かれた、この作品はあらためて近代という、人間と世界のあいだに亀裂が認識された世界が明確に描かれていた。 「ありとあらゆる道徳観念が、耐えがたいまでの重荷を負わされ」、「たえず、神の権威と、直接、関係づけられ、「罪という罪は、極微小の罪にいたるまで、宇宙世界と関係づけられる」と書くホイジンガの『中世の秋』(書評)やジョルジョ・アガンベンの『スタンツェ』(書評)が描く中世ヨーロッパの世界のあまりに激情的で残酷でもある世界と人間が直結した世界とは好対照である。 文学史における名作という点ではメルヴィルの『白鯨』(書評)も読んでみたし、ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』(書評)も読んだが、いずれもゲーテ『ファウスト』と同じく19世紀の作品。前者が1851年、後者が
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