著者は平成仮面ライダーシリーズの生みの親であるTVプロデューサー。 そんな著者が、日曜日朝八時の子供たちの正義のヒーローを通して世の中に対し問いかけていたことは現代における正義の在り方でした。 私が本書を読んで興味深く思ったことは、「正義の在り方」とそれに伴なう「正義の化身たるライダー自身のレゾンデートルの揺らぎ」という著者の存在論的視点です。 製作者及び作品間の正義の描き方の視点の違い、とりわけ「絶対的かつ普遍的な正義」と「相対的にして多元的な正義」という製作者間の正義に対する考え方の違いは、それ自身極めて現在的な問題の問いかけであり考えさせられましたし、後者の立場に立ちあくまでも問いかけ続けるというスタンスをとる作者の姿勢に私は良心を感じました。 また、時に異邦人でしか有り得ないライダーの存在の不条理さに、ともすれば根無し草になりうる現代人のエレジーを見た気がしました。 某アイビーリー