地方点描:寒ヤツメ[社会部] 年が改まってもお目にかかれていない。秋田市雄和地域で珍重されるヤツメウナギ。昨年12月に地域を流れる雄物川で漁の様子を取材して以降、食料品店に行くたびに探すが姿はない。漁に携わる人々が「ここ数年は幻の存在」と表現する意味をかみしめている。 晩秋から厳冬期にかけてのヤツメウナギは「寒ヤツメ」と呼ばれ、垂ぜんの的となる。脂が乗り、口にすると至福のひとときを迎えられるとか。ヤツメウナギは遡上(そじょう)前、海でブリなど冷え込みとともに旬を迎える魚の血液を食料にしているとされる。栄養価の高い餌を取ることにより、この時季に食味を増しているのだという。 ゴボウやネギ、豆腐と一緒に煮込んで楽しむのが一般的で、味付けはみそ、しょうゆなど。レシピが作り手の出身集落で異なるというのも興味深い。「身がふっくらとしていて、かば焼きにしても最高だ」との話を聞き、ごくりと唾を飲み込ん