ドラマ『この世界の片隅に』は、戦争ドラマとして観てはいけない（堀井 憲一郎） @gendai_biz

母は大正14年の生まれなので、昭和の年数と満年齢が同じでわかりやすく、記憶が正しいのならば、昭和12年まではふつうの生活を送り、昭和13年からはヒジョージ体制に入って、少女の楽しみでもあったちょっとした贅沢が取りやめになったということになる。 歴史を見れば、昭和12年に支那事変（当時の呼称、戦後に日中戦争と呼ぶようになった）が起こり、昭和13年から国家総動員体制が敷かれた。私の母の記憶と一致している。でも彼女はそういう歴史的な用語では説明をしない。おそらく、すずと同じである。自分の身の回りから世界を把握している。 少女にとっての戦争協力体制は「新しいオーダーメイド靴を我慢する」ことから始まっていたのだ。 もうひとつ、私の母の記憶。 京都は空襲を受けなかったため、爆撃機は京都上空を通過して大阪に向かったらしいのだが、そのときの風景を「あんた、もう空にびっしりシラミがわいたみたいに、白いのんが

[legoboku]

"戦時中であろうと、平時と同じく人には生活がある。 家族の団欒があり諍いがあり、些細な行き違いで心を痛め、小さいことで嬉しくなる。そういう生活があって、その背景に戦争がある。"