長い間、鎖国の殻に閉じ籠っていた幕末明治期の日本は、当時わが国を訪れた外国人の恰好の好奇心の対象となった。彼らは実に多くの著述を残した。僕が覚えている「名作」だけでも軽く10指近くになる。オールコック「大君の都」、ハリス「日本滞在記」、イザベラ・バード「日本奥地紀行」、アーネスト・サトウ「外交官の見た明治維新」、ヒュースケン「日本日記」、モース「日本その日その日」、ケンベル「江戸参府旅行日記」、等々。 また、これらの合せ鏡として、渡辺京二の「逝きし世の面影」という忘れ難い「名作」も生まれた。このように、類書はもう十分読んだはずなのに、なぜ本書を手に取ったのか。著者が「シルクロード」を「発見・命名」したあの大地理学者、リヒトホーフェンだったからに他ならない。 本書は二部に分かれている。第1部「使節団旅行日記1860/61」は、著者がプロイセン政府が派遣した通商使節団の団員として、江戸に、短期
![『リヒトホーフェン日本滞在記―ドイツ人地理学者の観た幕末明治』by 出口 治明 - HONZ](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/c4cef912034cd31a158bcfeba77e4e2ec6bccb01/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fimages-fe.ssl-images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F71IsfhQ2OFL._SL500_AA300_.jpg)