早起きじいさんのひとりごと。柳田国男の話、商品世界論、1970年代論、読み残した本の紹介、気まま旅の記録など。 《連載196回》 1953年(昭和28)9月3日、柳田国男の盟友でもありライバルでもあった折口信夫が亡くなった。享年満66歳。 1913年(大正2)からのつきあいだから、親和と反発をともないながらも、ふたりのあいだでは、かれこれ40年にわたって、つかず離れずの関係がつづいたのである。 もっとも折口は、最後まで盟友というより師として国男に接していた。年もひとまわり下だった。 静養中の箱根の山荘で、歩くこともままならなくなった折口は、うわごとのように「柳田先生にはとうとう負けたね。完全に負けた。くやしいね」と語った。そのいっぽうで、『万葉集大成』という企画で国男と対談する約束がはたせないことを申し訳なく思い、弟子の伊馬春部(いま・はるべ)に「杏伯[伊馬の号]、明日先生をおたずねして、