小学生のころ、このそうめんについて祖母から気になる話を聞いた。 「そうめんは古いほうが美味しいんだよ」 そう言いながら祖母は自信ありげな顔でそうめんを茹でていたが、「食べ物は新鮮なほうが美味しいって言うのになんで?」と幼心に思った。けれども幼い私にとってそんな疑問よりも目の前のそうめんのほうに関心は行き、その後も理由を調べることなく、気付いたら15年のときが流れていた。 しかし、つい先日その疑問は思いがけないところで解決された。 それは、たまたま手にとった『吉兆味ばなし』という本を読んでいたときのことだった。この本の著者は、あの高級料理店「吉兆」創業者の湯木貞一氏で、日本料理の基本的な調理方法から「吉兆」のこだわりまで細かく記されている。 ひとつひとつの料理についても本格的な解説がされており、そのなかには、そうめんについての記述もあった。 『そうめんを作るとき、油をつかっている、そのにおい