本の帯の写真は平成の即位式(1990年11月12日)の際のもので、天皇が着用しているのは黄櫨染束帯(こうろぜんそくたい)。平安時代以来の天皇の正装であり、明治天皇以降は即位式でも着用する。 過去を振り返ると、歴代の天皇は生涯の節目ごとに着用する装束(しょうぞく)が大きく変化した。皇太子は即位式を経て、天皇としての公私にわたる生活を始め、譲位すれば上皇となり、やがて出家して法皇となる場合もあった。ファッションとは全く異なる「装束が持つ意味」について、著書『天皇の装束 即位式、日常生活、退位後』を著した近藤好和さんに話を聞いた。 ――先生のご専門は。 私の専門は有職故実(ゆうそくこじつ)といいます。これは、天皇・公家が政治を行ううえで必要な実践の知識である公家故実と、将軍・武家が軍陣の際に必要な知識や幕府内での立ち居振る舞いを扱う武家故実に大別できますが、9世紀末以来の律令制から摂関制への移行
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