もう声を張り上げて名前を呼ぶことはない。それでも必死にがれきをかき分ける。母親(43)は息子の姿を捜し続けていた。東日本大震災から1週間が過ぎた18日。「だめなことは分かっている。早く冷たいところから出して抱き締めたい」 津波の被害が大きかった宮城県石巻市立大川小学校のすぐ近く。小3の長男(9)がまだ見つからないという。108人いる大川小の全校児童のうち、生存が確認されたのは24人だけ。2階建ての校舎は崩れて土砂が流れ込み、窓枠にはがれきが突き刺さったままだ。 学校はもはや避難所の役割を果たすことができず、遺体を運び込む場所もない。屋根のない高台のアスファルトの路上が、仮の安置所になっていた。ブルーシートがかけられた遺体のそばに、10から20ほどの色とりどりのランドセルが並ぶ。 「今日も見つからなかった」。別の母親(46)は夕方5時に捜索が終わると、長男(11)の青いランドセルを背負って力