コロンビアという世界の辺境の、そのまたはずれのカリブ海地方に生まれ、きわめて貧しい家庭環境に育ったガルシア・マルケスは、首都の裕福な階層の出身が多いラテンアメリカ作家たちの中では特異な存在だったと言える。それでいて、ラテンアメリカという世界の原像を彼がいかに巧みに描きだしていたかは、ラテンアメリカのどの国に行っても、彼のことを自国の作家だと信じきっている読者がたくさんいることでよくわかる。 代表作『百年の孤独』の中で彼が作り上げたマコンドという架空の小村は、不思議なほど多くのラテンアメリカ人に、自分の故郷に酷似した世界として読まれ記憶されたのだ。それだけならまだわかるが、彼が本当に偉大で現代的であったのは、ラテンアメリカの外にまで、同じ現象が広がっていったことだった。 アフリカ系のものと先住民系のものが交錯する土俗的な辺境の村の物語は、洗練されたインターナショナルなところなど微塵(みじん)