師匠と呼べる3人の存在 わたしは3度の宇宙飛行を経験するなかで、「どうしてわたしは宇宙に行くのか」といつも自分に問いかけていた。この一種の哲学的ともいえるテーマを考えるようになった背景には、師匠と呼べる3人の存在がある。 ひとり目はジャーナリストの故・立花隆さん。高校生だったわたしを宇宙飛行士の世界にいざなってくれた『宇宙からの帰還』(1983年)をはじめ、立花さんは一貫して宇宙飛行士の強烈な宇宙体験が人間の内面世界にどういう影響を与えるかを追究していた。実際にわたしが宇宙から戻ってから直接お話しする機会に何度も恵まれたが、「生と死」の境界線を見極めようとする真摯な姿勢に感銘を受けたのを覚えている。 もうひとりは、先輩の毛利衛宇宙飛行士。地球環境や生命のあり方を深く考察し、『宇宙から学ぶ――ユニバソロジのすすめ』(2011年)という一冊を著している。 3人目は、公益財団法人「国際高等研究所