食事の後、つい手を伸ばしたくなるのが、つまようじ。十万年前のネアンデルタール人が初めて使い、日本には仏教とともに伝わったというから、歴史は古い。 大阪府河内長野市。東は奈良、南は和歌山の県境に接し、面積の七割を森林が覆う。かつては国内シェアの97%を占める日本一のつまようじの産地で、専門メーカーは二十六社を数えたという。 現在は安い中国産に押され、市内では社員十八人の町工場、広栄社の一社のみが作り続ける。といっても、手掛けるのは、飲食店の卓上や割り箸の袋の中でよく見かける、軸が丸いようじではない。断面が二等辺三角形の「三角ようじ」だ。