「錦絵」をご存知だろうか? 錦絵は日本近世絵画を代表する浮世絵の一ジャンルだが、明治維新を前後して社会が大きく揺れ動き、清日、露日戦争などが続く中で、「報道性」のある安価で大衆的なメディアとして広く日本国民に普及したものだ。美術史的に興味深いとともに、歴史資料としても極めて貴重な資料と言える。私が館長を務める東京経済大学図書館に所蔵されている「桜井義之(さくらいよしゆき)文庫」に、錦絵およそ130点が含まれている。桜井氏は日帝時代、京城帝大の助手となり、のちに朝鮮総督府官房文書課で書誌作成や資料収集にあたった人物である。日本敗戦(朝鮮解放)とともに日本に帰国し、文献資料の収集を再開・継続した。「桜井文庫」はこの桜井氏の旧蔵書である。その錦絵コレクションは「世界的」とも称しうる貴重なものだ。朝鮮に関連するテーマは、「神功皇后・文禄・慶長の役」「征韓論争」「江華島事件」「壬午軍乱」「甲申政変」