文林通言 (中公文庫 A 72-3) 作者: 石川淳出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 1978/01メディア: 文庫この商品を含むブログ (2件) を見る 『文林通言』*1の中で、石川淳は三島由紀夫の『太陽と鉄』を評しながら次のように書いている; 「肉体」にかけた三島君の経験はさまざまと見えるが、わたしとして、たつた一つの例外をのぞけば、とくにおどろいてみせる義理がありさうなものはない。といふのは、竹刀をもつてする道場の稽古も、實戰ではない練兵場の訓練も、ホントの経験ではなくて、まあ擬似経験とでもいふべきものだからである。そこには實物としての敵はゐない。また實地に死を踏まへるといふことはない。また観念のほかにも悲劇はありえない。それだから、一應のハナシを聞けば、カラダをうごかすことの不得手なわたしの想像力をもつてしても、およその見當がつく。わからない部分があつても、わたしにとつてど