写真 | 17:00 |
日記 | 09:18 | 祖父が死んだのは一昨日の昼間だった。Yの祖父だ。その連絡は仕事をしている午後にYから入り、僕はその少し前に会社近くの道端で蛙が鮮やかな桃色の内臓を喉元からぱっくりと飛び出させて大の字で潰れているのと、鴉の死骸が川のほとりにバサリと落ちているのを目撃していたので、ああこういうこともあるのだな、と心痛に苛まれてしばらく仕事が手につかなかった。 彼の祖父は小学校の校長をやっていた人で、藍綬褒章を小泉純一郎元首相から授与されたくらいの、いわば地元の名士だったので、昨晩行なわれた通夜には夥しい数の弔問があり、式場は沈痛な黒で一面埋めつくされていたのだった。 しかし、式場の雰囲気はずいぶん落ち着いたものだった。社(やしろ)の前面に置かれた祖父の遺影は藍綬褒章授与式のときの写真であり、祖父の表情はふくよかで頬に赤みを帯びていかにも健康そのものであったが、その実祖父の笑顔のそ
雑記 | 16:38 | id:kinutさんに都道府県バトンをご紹介いただきました。バトンはmixiとかも含めてあまりやったことがないので回ってくると妙に嬉しい……!というわけでやります。 今住んでる都道府県は?(伏せ可) 東京都。あっという間に六年半。でも三多摩に引きこもってばかりで、23区の都会のほうのこととかはよくわかりませんので、大阪から来た友人や親類には役立たず呼ばわりされます。 東京って大阪とは違って、横長じゃないですか。それで地域ごとに大きい都市があって、文化圏がそれぞれ独立立しているようなイメージがあるんですよね。インカ帝国みたいな(なんか違うか)。大阪はキタとミナミでほとんど語り尽くせちゃいそうなところがあってキタとミナミを中心にして成立してないですか?だから、いくら大阪が都会だなんだっつっても東京の都会具合には驚いちゃうし、適わないな、ってなもんですよ。僕が東京に出て
11:35 | 第五夜 勝間和代の白い頬が濡れた。雨であった。停車場の薄明かりを三歩離れると既に光は遠ざかり、和代は堪え切れず振り返った。小さな二つの光がみるみるうちに消えてなくなる。最終電車であった。 和代の黒髪が、商店の軒下の蛍光灯に照らされ、ときおりきらりと光を帯びて煌めいている。光は剛質の髪の波打つおもてをキラキラと舞うように漂っている。和代はその癖毛が嫌いであった。無機的なシャッターがどこまでも続くうらぶれた駅前通りのしじまにあって、その癖毛のきらめきは、混沌の沼に咲く一輪の蓮のようである。 そういう優雅さとは裏腹、和代は俯いていた。ほとんど泣き出しそうであった。眉間に皺を寄せ、頬はぐにゃりと変形して目尻を圧迫し、鼻はひん曲がっている。だんだんと、それが酷くなる。誰にも見せたことのない和代の泣き顔が、商店街を駆け抜けていった。ぴちゃぴちゃ、コツコツと、小さな和代の痕跡が通りに谺
日記 | 21:07 | 僕はいわゆる変態性癖の持ち主でして、それはなんというか一般のごくありきたりの自慰や性交に興じるのみで事足りる人たちと比べると、ということでそりゃ僕などよりも特殊な性嗜好を持つ方はごまんといられるでしょうが、僕が自身で自覚しているところでは、僕は軽度のスカトロを愛好し、臭い(匂いじゃない)に性的興奮をおぼえ、アナルプレイをこよなく愛し、腋毛をたわわに蓄えた女性が好き、とかまあそういう、大方は人間の裡にある動物性をごく原初的な形で発露させただけ、というような、そう考えると普通にスケベなだけじゃん、ということになってしまうような、まあそういうところなのです。 それが、会社にバレた!会社に!バレ!た! バレたというかまあ個人情報の開示はごく最小限に留めているとはいえ、こういう場所でうんこがどうだのチンコがどうだのということを、実際にこの僕が経験した日常の出来事や実在す
日記 | 01:04 | 暑いのか寒いのかも判然としない、終始眠気が脳の皺のいずくかを漂い、邪魔をする。僕はそういう昼に鬱々としてソファに腰掛けている。手の振るえが止まらない。それから足の裏にじっとりと汗をかいており、それらは新陳代謝による体内活動の作用とは別な、いわば緊張であるとか精神的な切迫感から来る生理現象であり、僕はその汗のじわりと湿ったラグマットをじっと見つめていた。ずいぶんと熱く熱せられたため息が湿気を帯びた前腕の体毛に吹きつけられて、不快感が増した。 妻が僕に怒りをぶつけたのは夕食のあとのことで、それはとても珍しいことだったので僕は驚いた。夕食の片づけを済ませたあとのダイニングテーブルには急須と湯のみが二つ、それから朝刊が雑然と置かれている。それを差し挟んで僕と妻は座って顔面を硬直させている。妻は言った。「アリサちゃんて誰やの」「コレなに?」「3年前の8月21日、アンタど
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