古代エジプト文明はオンリーワンなイメージゆえか世界史の中でもそれ単体で完結した文明であるかのように見える。しかし、古代エジプトに限らないが、文明は相互に影響しあいながら成立し発展していくものだ。本書は古代エジプト文明が文化的独自性を保ちつつも、外部の諸文明とどのようにかかわり、影響を与えていったかを描く一冊である。 クレタ島のミノア文明は地中海世界でギリシア、メソポタミア、シリア・パレスティナ、エジプト、アナトリア各地方を繋ぎ文明の橋渡し役となった。エジプト中王国時代と見られるアナトリア地方や西アジアから輸入されたラピスラズリや銀を用いた製品が多く含まれる「トゥードの遺宝」はクレタ島・ミノア文明の影響を強く残していた。一方、ミノア文明でも、紀元前十五世紀頃のテーベの貴族メンケペルラーセネブの墓にはファラオにひれ伏すクレタ人の朝貢の様子が描かれた壁画があり、相互に人的交流があったことが明らか
![『古代エジプト文明 世界史の源流 (講談社選書メチエ) 』大城 道則 著 | Call of History ー歴史の呼び声ー](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/b262e041b564c5d7da66412727f2b7646030287c/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fcall-of-history.com%2Fwp-content%2Fuploads%2F2019%2F08%2F51suGhegTeL.jpg)