事実関係はほとんど明らかではないが、時間外勤務手当請求事件で被用者が使用者に対してタイムカードの提出命令を申し立てて、原々審では認められたところ、即時抗告で所持していないと主張されると、即時抗告のあった事実すら相手方(提出命令申立人)に知らせることなく、原決定取消・申立て却下の決定を下したというものだ。 最高裁は、これに対してかなり長い理由とともに裁量権の逸脱を認めた。 (1) タイムカードは本件訴訟で極めて重要な書証で、当事者の主張立証の方針や裁判所の判断を左右するものである。 (2) 文書提出命令申立てに対する手続が本案訴訟の一部をなす。 (3) 本件文書の所持・不所持は提出命令を左右するポイントで、その判断は当事者の主張立証に依存するものである。つまり当事者に攻撃防御の機会を与える必要性は高い。 (4) 原審は不所持を具体的に主張し、一審決定後に提出された書証も引用されている即時抗告