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ブックマーク / blog.goo.ne.jp/ck1956 (8)

  • 「わたしたちが孤児だったころ」~抑制されたエンターテインメント - 酔生夢死浪人日記

    カズオ・イシグロは1954年に長崎で生まれ、5歳時に一家で渡英する。その作風は、映画に例えるなら小津安二郎で、読み進むにつれ懐かしい湿感が心に染み込んでくる。 最新作「わたしを離さないで」については、別稿(3月8日)で触れた。今回は前作の「わたしたちが孤児だったころ」の感想を記したい。デビュー作「女たちの遠い夏」、第2作「浮世の画家」はともに、ルーツ(日)に遡及した作品だったが、作にも和糸がくっきり織り込まれている。 クリストファーは親友アキラとともに、上海租界で少年期を過ごした。ロンドンで探偵として名声を得たクリストファーは、自らが孤児になった経緯を探るため、魔都上海に帰って来た。アヘンと英国企業との関わり、国民党と共産党とのせめぎあい、腐敗した警察、独自の権力を持つ軍閥……。両親の失踪は当時の社会状況と無縁ではなかった。 クリストファーが両親、アキラとの掛け替えのない絆を追い求める

    「わたしたちが孤児だったころ」~抑制されたエンターテインメント - 酔生夢死浪人日記
  • ソニックス&ボアダムズ~ビートの雨に濡れそぼつ夜 - 酔生夢死浪人日記

    昨夜(20日)、新木場のスタジオコーストでソニック・ユースとボアダムズを見た。親交厚い日米アングラ帝王のジョイントライブに、超満員の聴衆が詰め掛けていた。 真っさら状態で臨んだボアダムズに衝撃を受ける。打楽器3人の編成で、意識の底をハンマーで砕くようなインプロビゼーションだった。野生と人工が混然一体となり、轟音が礫になってフロアに飛んでくる。「自分を解き放ってるかい」と問いかける入魂のパフォーマンスに、ロートルの俺はただ立ち尽くすのみだった。 余韻が冷めぬうち、ソニックスがステージに現れる。“Teenage Riot”などの定番は演奏せず、新作“Rather Ripped”中心のラインアップに、「俺たちの今を聴いてくれ」というバンドの姿勢が窺えた。“Rather Ripped”収録曲は乾いた心身に染み入る柔らかなアルバムだが、ライブではギザギザのナイフになって聴衆を抉ってくる。 2年前の来

    ソニックス&ボアダムズ~ビートの雨に濡れそぼつ夜 - 酔生夢死浪人日記
    microtesto
    microtesto 2007/04/23
    サーストンの耳の良さは異常。
  • ネット時代の政治動向~統一地方選の結果を踏まえ - 酔生夢死浪人日記

    石原慎太郎氏が都知事選で3選を果たした。五輪招致と市場移転に否定的な声も強いが、投票行動に結び付かなかった。当選一夜明け、傲岸な石原節は復活している。北海道でも現職知事が圧勝した。争点の格差はどこへやら、都民と道民は、痛みに鈍感になってしまったのだろうか。 俺の神経も磨耗し切っている。ネット上を徘徊し、災害や温暖化の深刻な現実、不正義の数々を知っても、別のHPに飛んだ瞬間、憤りや痛みは消えている。ネット依存で世界との阻隔感が拡大し、鋼の皮膜をコーティングされたように、物事をリアルに感じることができない。 先日、興味深いニュースが流れた。日語ブログが英語を抜き、37%のシェアで言語別のトップに立った。英語圏の人口は日の3倍以上であることを考えると、日でのブログの普及は目を瞠るものがある。政治ブログの数も多いが、海外と事情が異なる。韓国台湾でも、ブログは政治行動への参加を呼びかける手段

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  • カ-ト・コバーンという進行形の神話 - 酔生夢死浪人日記

    先日WOWOWで「カート・コバーン~All Apologies」(05年、英)が放映された。27年の生涯に自らピリオドを打ったカートの素顔に迫るドキュメンタリーである。2年前の当ブログでは遺体発見の日と混同して「4月8日」と記していたが、正しくは今日(5日)が命日に当たる。訂正も兼ね、作を下敷きにカートとニルヴァーナについて書くことにする。 80年代のアメリカは現在の日の予告編で、中産階級崩壊と地方都市荒廃が進行していた。カートが育ったアバディーンも同様で、貧困に両親の離婚が重なり、ダウナーな思春期を過ごす。家を飛び出し、橋の下や病院待合室で眠ることもあったという。孤独を癒すために読み漁ったブコウスキーやバロウズが、喪失感に満ちた詞の原形になる。 ロックだけが這い上がる手段だったカートは、クリス・ノボセリックとニルヴァーナを結成する。彼らを見いだしたのは英誌NMEで、渡英中に最初のテレ

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  • 「相棒」の尽きせぬ魅力 - 酔生夢死浪人日記

    ここ数年、「相棒」にハマっている。発見したのは午後の再放送で、「おー、水谷豊だ。おじさんになったなあ」が第一印象だった。「男たちの旅路」で吉岡(鶴田浩二)に反抗する陽平を演じた水谷は、当時の鶴田と変わらぬ年齢になった。鶴田びいきの俺でさえ、現在の水谷の方が演技者として成熟していると思う。 水谷演じる杉下右京警部は、頭脳明晰の東大出身のキャリアながら、変人ゆえ出世コースから外れた。「人材の墓場」特命係に配属され、亀山薫(寺脇康文)と「賢兄愚弟」の凸凹コンビを組んでいる。図体の割に役に立たない亀山だが、右脳的閃きと情熱で杉下を助け、事件を解決に導くことが多い。 強烈な存在感を放つのが、杉下とは浅からぬ因縁のある小野田官房長(岸部一徳)だ。「もう一度、僕と組まない」と提案するも、いつも杉下にかわされている。杉下と別れたたまき(高樹沙耶)、亀山と美和子(鈴木砂羽)の4人が、たまきが経営する小料

    「相棒」の尽きせぬ魅力 - 酔生夢死浪人日記
    microtesto
    microtesto 2007/03/05
    たまに見るけど面白いよね。
  • 2・26から71年~パトスと情念は何処へ - 酔生夢死浪人日記

    「天皇と東大」(立花隆著)に触発され、2・26事件(1936年)について記すことにする。テーマがテーマだけに昨日中に更新するつもりだったが、夕飯後に不貞寝し、目が覚めたら日付はとうに変わっていた。 30年代前半、浜口首相襲撃(30年)、3月事件、10月事件(31年)、5・15事件、血盟団事件(32年)、神兵隊事件(33年)、永田軍務局長斬殺(35年)とクーデター未遂や要人テロが相次いだ。対する左翼も負けてはいない。度重なる弾圧でインテリ層は意気阻喪状態だったが、鐘紡、東洋モスリン(30年)、住友(31年)、東京市電(34年)など大規模な労働争議が頻発していた。 左右の活発な動きの前提は、飢饉による農村の疲弊と都市での格差拡大だった。当時の政府は、<先軍政治>を掲げる現在の北朝鮮同様、国家予算の多くを軍備増強に割き、民衆の喘ぎに頬かむりしていた。「天皇と東大」にも記されていたが、左右両極は「

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  • 「オール・ザ・キングスメン」が抉る権力の本質 - 酔生夢死浪人日記

    オバマ上院議員(45)が米国初の黒人大統領に向け、キャンペーンを開始した。民主党の候補指名争いは、女性初を目指すヒラリー・クリントンとの一騎打ちが予想されている。オバマの動向も気にはなるが、それ以上に注目しているのは反グローバリズムの旗手、ベネズエラのチャベス大統領だ。 「キリストは史上最高の社会主義者」「社会主義か死か」……。刺激的な発言を繰り返すチャベスが最も物議を醸したのは、国連総会での演説だった。米ブッシュ大統領にチョムスキーの著書を薦めた後、「ブッシュは悪魔」と痛罵した。チャベスは<唯一の強大国アメリカ>に対峙する<南米=アラブ諸国=中ロ連合>形成を模索し、積極外交を展開している。 1年半の期限付きとはいえ、議会を超越した権力を大統領に保障する「授権法」がベネズエラ国会で成立した。<米資追放⇒石油&天然ガスのプロジェクト国営化⇒民衆への富の還元>という道筋は絶対正しい。だが、独

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  • 「天皇と東大」~日本式ファシズムの源流とは - 酔生夢死浪人日記

    立花隆著「天皇と東大」(上下巻)を読了した。「文藝春秋」に連載された原稿に修正を加えた1600㌻に及ぶノンフィクションで、「大日帝国の滅びの道筋」が描かれていた。立花氏はアカデミズムとジャーナリズムの分水嶺に位置し、両者の優れた面を併せて提示できる稀有の存在である。 「朝まで生テレビ」などで、以下のような趣旨の発言を頻繁に耳にする。即ち<日のファシズムは民衆の排外主義に根差し、メディアの煽りもあって広まった。軍部や政治家だけに戦争責任があったわけではない>……。 定説化しつつある上記の論調が全くの的外れであることを、書は明確に示している。大正デモクラシーとマルキシズム支持の広がりに危惧を覚えた軍部、政治家、民間右翼が一体となり、<チーム>を形成した。彼らの思想的支柱になったのは戸水寛人、上杉慎吉、平泉澄、土方成美ら東大教授だった。 上杉は天皇神格化を目指しながら、精華を見ることなく他

    「天皇と東大」~日本式ファシズムの源流とは - 酔生夢死浪人日記
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