安倍政権が異例の長期政権となった原動力の一つは、経済政策だ。安倍晋三首相は経済政策として「アベノミクス」を掲げ、金融緩和、財政出動、成長戦略の三本の矢でデフレから脱却し日本経済を再生すると宣言。選挙のたびにその成果を訴えてきた。7年8カ月続いたアベノミクス。円安や世界経済の回復もあって企業業績は好調となった一方、金融市場のゆがみや政府の借金の増加などその負の遺産も膨らんでいる。【大久保渉、浅川大樹、和田憲二、花澤葵】 「20年続いたデフレに三本の矢で挑み、400万人を超える雇用を作り出すことができた」。安倍晋三首相は辞任を表明した8月28日の記者会見で経済政策の成果についてそう述べたが、「アベノミクス」という言葉は一度も口にしなかった。かつて米国で「バイ・マイ・アベノミクス(アベノミクスは買いだ)」と演説するなど、ことあるごとにアピールしたのと比べると、落差が際立った。