――新型コロナの感染拡大で、EU加盟国の中でも入国制限が導入されました。EUの理念に反するのではないですか。 3つのことが言えます。まず感染症を含む公衆衛生はEUでなく加盟国のコンペテンス(権限)。EUにできることは限られています。 EUはその範囲で、域内市場や移動の自由への制限をできる限り少なく、例外的なものにとどめようと努力していますが、危機の時に国家主権が前面に出てしまうのは想定されていることです。 ただ、そうは言っても、加盟国レベルの単独行動が目立ち、ひどかったよねというのが2点目。当初はマスクや医療機器の輸出を規制するなどして、ドイツが他の国を助ける姿勢をまったく見せなかった。その後少しずつ修正し、患者をイタリアから引き受ける形でソリダリティー(連帯)を示すようになりました。3点目は、医療の連帯も大事だけれど、本丸は(統一通貨の)ユーロだということです。 欧州中央銀行本部=和気真