かなり時間がたってしまったが浅草のアンヂェラスが閉店してしまった。 嫁さまが騒いでいたけれど、行ったことがない顔でいるしかなかったのは結構苦しかった。 学生から社会人になりたての頃に付き合っていた彼女とは浅草で別れた。 小雨が降るような、やや肌寒い日だったと思う。フロントガラスに水滴が流れていたのを憶えている。 彼女が川端でクルマを止めておもむろにいった。 「あなたはきっと最高の奥さんと結婚する、私が保証する。」 予想もしなかった言葉で呑み込むのに時間がかかった。でも結論は、続く言葉を聞いても別れの言葉でしかなかった。 それまでもすれ違いの連続で、そうなることは必然だったのかもしれない。でも、でも。 僕はすがったけれど彼女の結論は変わらなかった。 あれから月日はたち、子供はいないけれど嫁さまと幸せな日々をすごしている。 幸せだなと思うと、おりおり彼女の言葉を思い出す。 今ではまったく接点が