鳥取大学医学部附属病院救命救急センター教授の上田敬博(うえだ・たかひろ)が、2年前、あの患者と接した4ヶ月を語る 「どうせ死刑になる」――。全身の9割以上に深刻な火傷を負った男は、自らの命を救った主治医にそう言い放った。36人もの尊い命を奪った、京都アニメーション放火殺人事件の容疑者である。その困難な治療を担った上田敬博(うえだ・たかひろ)は、彼とどう向き合い、何を変えようとしたのか? 【画像】事件後の京都アニメーション第1スタジオ * * * ■「もし来るとすれば"奴"かな」 上田敬博がその事件を知ったのは、2019年7月18日昼のことだった。京都市伏見区の京都アニメーション第1スタジオに侵入した男が、バケツ2杯のガソリンを撒(ま)いて火を点(つ)けたという。 当時、上田は大阪府大阪狭山市にある近畿大学病院の救命救急センターに勤務していた。京都医療センターの旧知の医師から、近大では何人受