星新一(作家、1926~1997)がある年に友人たちに送った年賀状にはこう書かれていたそうです。 ことしもまたごいっしょに九億四千万キロメートルの宇宙旅行をいたしましょう。これは地球が太陽のまわりを一周する距離です。速度は秒速二十九・七キロメートル。マッハ九十三。安全です。他の乗客たちがごたごたをおこさないよう祈りましょう。 (『きまぐれ博物誌』角川文庫所収のコラム「思考の麻痺」より) 年賀状がまるでショート・ショート(超短編の小説)ですね。 この「名言」の年賀状が書かれたのは、1960年代の終わり。引用元のコラムに“先日、三億円を巧妙に奪取した事件があり”とあるので、昭和の有名な犯罪「三億円事件」があった1968年頃のようです。 昨年(2022年)の後半に、地球の人口は80憶をこえました。星のこの年賀状が書かれた時代――1970年の世界人口は37億人でしたから、50年余りで2.2倍に増え