朝井リョウの新作小説『正欲』(新潮社)が、各所で話題だ。作家生活10周年を記念する作品となった『正欲』は、朝井にとって「小説家としても一人の人間としても、明らかに大きなターニングポイントとなる作品」であり、実際に書きながら様々な発見があったという。作品の特性からあらすじの詳述は控えるが、人間の欲望や社会の眼差しといったものについて考えさせられる作品であり、特設サイト(https://www.shinchosha.co.jp/seiyoku/)では刺激的な感想が並んでいる。本書はどのように執筆されたのか、ライターの速水健朗が迫った。(編集部) 自分の意思というものは、本当はないんじゃないか 朝井リョウ『正欲』(新潮社) ーー小説で「社会の見方が変わる」ことってありますよね。『正欲』は世の中の規範が変わりつつある時代の中で、「ダイバーシティ」とか「新しい生活様式」といった言葉とともに書かれてい