三菱ケミカルホールディングス(HD)は二酸化炭素(CO2)を実質的に排出しない車向け樹脂を開発する。米新興企業と植物由来の原料を使って実用化を目指す。世界各国・地域がカーボンゼロを目指すなか、調達網全体でCO2を減らす動きが自動車業界などで増えており、脱炭素への対応が素材の競争力を左右するようになっている。三菱ケミカルHDは米リングローブ(カリフォルニア州)に出資し、麻の一種「亜麻」の繊維と石
SDGsの裏側 国連加盟193カ国が達成を目指す国際目標「SDGs」。世界が一致団結して地球上の課題を克服するという美しい理念だが、その裏では主要国が激しい覇権争いを繰り広げている。欧州は得意とする“ルール作り”でパワーゲームをリードし、世界経済の支配を狙う。劣勢を強いられる日本は、このままのみ込まれるのか。 バックナンバー一覧 “環境対応”というクリーンな政策の名の下、欧州は域内の産業振興という裏ミッションを着々と進めている。日本の総合商社や電力会社は、そのしたたかな戦略に巻き込まれている。特集『SDGsの裏側』(全6回)の#2では、覇権を争う欧州のもくろみを解き明かす。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮) スイスの資源商社に翻弄された 日本の電力会社 発電用石炭である「一般炭」を巡るスイスの資源商社グレンコアと、日本の電力業界を代表した東北電力による「チャンピオン交渉」は2018年6月、交
「Made in Japan」。戦後の日本を先進工業国へと引き上げ、ハイクオリティーを象徴するこの言葉が、逆に、日本の製造業の足かせとなる日が来るかもしれない──。そんな危機的なパラダイムシフトが、世界で既に始まっている。各国で進む二酸化炭素(CO2)排出規制の強化だ。 この脱炭素の波頭が持つ破壊力の大きさを肌身に感じ、日本で最も焦燥感を募らせているのは恐らく、トヨタ自動車の豊田章男社長だろう。 「このままでは、最大で100万人の雇用と、15兆円もの貿易黒字が失われることになりかねない」──。東日本大震災から10年を迎えた3月11日、豊田氏は日本自動車工業会(自工会)会長として記者会見に臨み、そんな衝撃的な試算結果を公表した。 脱炭素に乗り遅れた10年 欧州や中国では、製品のライフサイクル全体で生じるCO2排出量をベースにした「ライフサイクルアセスメント(LCA)」規制の検討が着々と進んで
鉄鋼業界には大逆風だ。だが、世界の趨勢は「グリーン製鉄」に方向転換している。環境技術先進国とおごる時代は過ぎ去った。欧州勢が中国企業とも提携し、巨額投資で低炭素技術の開発に取り組む一方、日本の鉄鋼業界はこの試練を乗り越えられるのか——。 経団連・中西宏明会長も「達成が極めて困難な挑戦」と述べた 「寝耳に水だ。唐突すぎる」——。 菅義偉首相が所信表明演説で2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする「脱炭素宣言」をするとの情報に触れた直後、日本製鉄の橋本英二社長は周囲にこう漏らした。 その直後、橋本社長は政権の真意を探るため、渉外担当の幹部たちを経済産業省に向かわせた。 経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)も菅首相の所信表明を受けての声明の中で、「達成が極めて困難な挑戦」だと述べるなど、経済界には厳しい宣言となっている。 鉄鋼業界は長く、新日鐵住金(現・日本製鉄)が歴代、会長を輩出する
政府は29日に開いた脱炭素社会の実現に向けた会議で、二酸化炭素の排出量に応じて、企業などがコストを負担する「カーボンプライシング」の導入に向けた、新たな制度案を了承しました。 総理大臣官邸で開かれた「GX=グリーントランスフォーメーション実行会議」には、岸田総理大臣や西村経済産業大臣、それに経団連の十倉会長などが出席しました。 会議では、2050年に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現をめざし、政府が検討している「カーボンプライシング」の導入に向けた、新たな制度案が示されました。 この中では、企業に排出削減の取り組みを加速させるため、排出量を削減した分を、株式や債券のように市場で売買する「排出量取引」を、2026年度以降本格稼働させるとしました。 また、化石燃料の使用を減らすため、電力会社に対しては、将来的に有償で排出枠を割り当て、負担を求めるとしています。
戦後生まれのホンダが、後発ながら世界的な四輪車メーカーに上り詰めた原動力は、創業の原点であるエンジンにあった。 二輪車メーカーから四輪車への進出。参戦・撤退を繰り返した世界最高峰の自動車レース「F1」に対するこだわり。1970年代に世界で最も厳しい排出ガス規制とされた米国の「マスキー法」(大気浄化法)をクリアした低公害エンジン「CVCC」の開発……。 そのどれをとっても、時代を先取りした創業者、本田宗一郎氏のフロンティアスピリットが息づいている。いわばエンジン屋としてのDNAがホンダの成長力だった。それをかなぐり捨てる「脱エンジン」の宣言は半端なことではない。 脱エンジン宣言はトヨタ自動車に対する先制攻撃か ホンダの発表した方針には、エンジンで発電しモーターで駆動するハイブリッド車(HV)は含まれていない。額面通りの「脱エンジン宣言」である。二酸化炭素(CO2)を少しでも出す新車の販売を一
経済産業省は、エネルギー消費が拡大するアジア各国で、脱炭素を実現するための枠組み作りを本格化させ、ことし5月に開かれる「G7広島サミット」に向けて、この分野の議論をリードすることにしています。 政府は去年、エネルギー消費が拡大するアジア各国と共同で、持続的な経済成長と脱炭素の両立に向けた枠組み「アジア・ゼロエミッション共同体構想」を打ち出しています。 これを受けて経済産業省は、ことし3月、ASEAN=東南アジア諸国連合の主要国やオーストラリアなどを招いて、初めての関係閣僚会議と官民投資フォーラムを東京で開くことにしています。 ASEAN各国でも気候変動問題への対応が求められていますが、風力発電や太陽光発電に適した土地が少なく、火力発電の活用を続けざるをえないことが課題になっています。 このため、日本としては、 ▽石炭火力から、より二酸化炭素の排出量が少ない火力発電への移行などを金融面で後押
国内の風力発電整備で、洋上風力の拡大が見込まれている。日本風力発電協会(JWPA)によると2022年末時点で風力発電の国内導入量は陸上中心で480万キロワット。国内発電電力量の0・9%(環境エネルギー政策研究所〈isep〉調べ)に過ぎないが、30年代からは洋上風力が急増する見通し。同年代半ばからは発電機を洋上に浮かべる「浮体式」の大量導入が見込まれる。日本の風力関連産業を世界レベルに育成するチャレンジとなる。(いわき・駒橋徐) 大きな潜在力 50年めど6000万kW導入 国内の洋上風力導入量は現状では14万キロワット。今後は発電機を海底に固定する「着床式」の設置エリアが港湾区域から一般海域に広がり、31年度までに41件(出力合計1820万キロワット)の運転開始が計画段階にある。JWPAは洋上における風力発電の潜在性について、水深50メートルまでの着床式で1億2800万キロワット、同100―
(池田 信夫:経済学者、アゴラ研究所代表取締役所長) スタグフレーションという言葉を聞いたことがない人も多いだろう。1970年代に不況(スタグネーション)とインフレが同時進行した状況を指す言葉である。日本では「石油ショック」として知られているが、長く過去の出来事だと思われていた。 しかし9月の企業物価数は前年比6.3%上がり、ガソリンの価格は20%上がった。その最大の原因は、世界的な資源インフレである。コロナ不況から脱却できない中で、70年代のようなスタグフレーションは再来するのだろうか。 スタグフレーションをもたらしたのは政治だった 今回のインフレのきっかけも、エネルギー資源の値上がりである。かつては第4次中東戦争をきっかけにOPEC(石油輸出国機構)が原油を値上げしたことが原因だったが、今回は世界各国で進められている「脱炭素化」が最大の原因である。 中国では政治的な理由でオーストラリア
消費者物価の高止まりが続くユーロ圏だが、その中でもドイツの物価上昇は伸びが続いている。 その背景にあるのは構造的な労働力不足と、それに伴う賃金上昇圧力の高まりだ。 ドイツの景気がさらに下振れした場合、EU経済が本格的な景気後退に陥る可能性がある。 (土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員) 欧州中央銀行(ECB)は7月27日に定例の政策理事会を開催し、3種類ある政策金利をそれぞれ0.25%ずつ引き上げた。利上げは9会合連続であり、主要な政策金利である主要リファイナンス・オペ金利は4.25%となり、欧州連合(EU)の統一通貨ユーロが誕生(1999年1月)した直後の2000年8月以来の高水準となった(図表1)。
ロシアのウクライナ侵攻によって欧州で原子力発電への回帰が色濃くなる可能性が出てきた。欧州は天然ガスの約4割をロシアに依存し、特にガスパイプラインでつながるドイツでは影響が大きい。独はフランスから電力を輸入しているが、その仏は2021年来、脱炭素電源として原発新増設を旗幟(きし)鮮明にした。エネルギー安全保障の観点からさらにそれが加速すると専門家は見ている。欧州では原発産業が衰退しており、ロシアや中国の原発にも頼れない。日本勢の出番が増える可能性もある。 「特にエネルギーについては経済制裁による「返り血」で、制裁をかけた方が身動きが取れなくなることが多い。ウクライナ問題がどこまで長期化するかにもよるが、欧州で『準国産エネルギー』たる原子力発電を活用すべきという方向に世論が傾く国があるかもしれない」。国内外のエネルギー動向に詳しい国際環境経済研究所の竹内純子理事・主席研究員はこう解説する。 米
ウクライナ情勢に伴うエネルギー価格の上昇などを踏まえ、岸田総理大臣は経済財政諮問会議で、日本経済の体質を強化するため脱炭素など新たな成長が期待できる分野に重点的に投資していく考えを強調しました。 総理大臣官邸で開かれた経済財政諮問会議では、エネルギー価格上昇への対応や、今後の経済運営について意見が交わされました。 この中で民間議員は、ウクライナ情勢で海外への依存度が高い日本のエネルギーのぜい弱性が浮き彫りになったとして、安全性を確保した原発の再稼働も含めて、利用可能な技術や資源を総動員するとともに、水素など、革新的な技術開発を進めるべきだと指摘しました。 岸田総理大臣は「エネルギーをはじめとする原材料価格の上昇に対しては、影響を緩和すべく機動的な対応を行う。そのうえで、より本質的には持続的な成長力を高め、日本の経済をショックに強い体質に変えていく必要がある」と指摘しました。 そのうえで「オ
各国首脳が英グラスゴーで気候変動対策を議論した先週末、トヨタ自動車の豊田章男社長は岡山県内のサーキットで自動車レースに参戦していた。電気自動車(EV)が脱炭素を実現する車として唯一の選択肢ではない、既存の内燃機関を使った自動車なら業界に携わる数百万人の雇用を維持できると訴えるのが狙いだった。 さまざまな選択肢 豊田社長がハンドルを握ったのは、鮮やかにカラーリングされた「カローラ スポーツ」。小型車「GRヤリス」のエンジンを改造し、ガソリンの代わりに水素を燃料に使った水素エンジン車だ。実用化できれば、脱炭素化時代でも内燃機関を活かし続けることができる。 「敵は炭素であり、内燃機関ではない。1つの技術にこだわるのではなく、すでに持っている技術を活用していくべきだ」と豊田社長はサーキットで語った。「カーボンニュートラル(温暖化ガスの実質排出ゼロ)とは、選択肢を1つに絞ることではなく、選択肢を広げ
一気に具体化してきましたよ。 JR西、水素の活用検討を本格化 JR西日本は2024年5月24日、「水素燃料電池車両」の具体的な検討を開始したと発表しました。 JR西日本の電気式気動車DEC700。水素燃料電池システムへの置き換えも想定されている(画像:JR西日本)。 軽油で走る気動車(ディーゼルカー)の置き換えを目指すもので、三菱電機およびトヨタとともに、次のコンセプトで新型車両を開発します。 ・燃料電池システムや水素貯蔵システムに汎用性の高いものを採用し、国内外の標準化を想定した仕様。 ・モーターを制御する主回路システムは電気式気動車と共通化を図り、電気式気動車の燃料電池車両化が行える構成。 水素を使った燃料電池で発電し、その電気でモーターを回して走る方式を想定。今年度から仕様検討を開始し、2030年代早期の営業運転開始を目指すとしています。 また、JR西日本は2021年に、非電化区間へ
実証試験が進む大崎クールジェン石炭火力発電がカーボンニュートラル(温室効果ガス実質排出ゼロ)に挑んでいる(※)。安価で埋蔵量の豊富な石炭は日本のエネルギー安定供給に長く貢献し、いまも発電量のうち約3割を担う重要電源。政府が2050年のカーボンニュートラルを掲げるなか、二酸化炭素(CO2)排出の削減余地の大きい石炭火力は目標達成への鍵も握る。発電効率の向上に加え、水素やアンモニアとの混焼による排出削減、CO2を回収して地中に貯留する「CCS」、CO2を資源として再利用する「カーボンリサイクル」などイノベーション(技術革新)の芽吹く、フロンティア(最前線)を探った。 ※石炭火力が排出するCO2で大気中CO2を増やさないこと。発電効率を上げて石炭の使用量を減らしつつ、バイオマスのような大気中CO2を吸収して育った燃料やアンモニアのようなCO2を出さない燃料を混焼するなどしてCO2の排出量を減らし
三菱日立パワーシステムズ(MHPS)が米国ユタ州で進む水素を燃料として利用するガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)発電プロジェクトから発電システムを受注。プロジェクトでは再エネ由来水素を活用し、2025年に水素混焼率(体積比による混合比率)30%、2045年までに水素100%での運転を目指している。 三菱日立パワーシステムズ(MHPS)は2020年3月、米国ユタ州のIPP(独立電力事業者)であるインターマウンテン電力(IPA)が計画する水素を利用したガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)発電プロジェクトから、84万kW級発電設備を受注したと発表した。 GTCC発電設備は、米国ユタ州都ソルトレイクシティの南西約140kmに位置する石炭火力発電所の設備更新により建設するもの。発電設備はIPAが所有し、同社の最大株主であるロサンゼルス水道電力局(LADWP)が運営する。 プロジ
水素で製鉄、50年めど実用化 「脱炭素宣言」に137社・団体 2020年06月08日19時10分 記者会見する経団連の中西宏明会長=8日午後、東京都千代田区 経団連は8日、二酸化炭素(CO2)排出量の実質ゼロを提唱する「チャレンジ・ゼロ」構想に、137社・団体が参加を表明したと正式発表した。メーカーから金融まで幅広い業種の参加企業は、技術革新を通じ「脱炭素社会」を目指すと宣言した上で、具体的な取り組み事例を経団連に報告する。産業部門では排出量の大きい鉄鋼業界が2050年をめどに、石炭を使わず水素を利用した製鉄技術を開発する目標を掲げた。 経団連の中西宏明会長は同日の記者会見で、脱炭素化について「経済界としてひとつの大きな動きに持っていきたい」と強調。政府と脱炭素化に向け必要な政策を協議していく考えだ。 鉄鋼業界では日本製鉄、JFEホールディングスなどが参加。水素活用をめぐっては、トヨタ自動
関連キーワード Google | SAP | データセンター | 環境保護 | パブリッククラウド 発電用設備やシステムなどの生産を手掛けるエネルギー企業のSiemens Energyは、ITインフラの脱炭素化を主な目的として、同社がオンプレミスのインフラで稼働させているSAPアプリケーションと、製造部門やサプライチェーン部門に関連するデータを全てGoogleのクラウドサービス群「Google Cloud Platform」(GCP)に移行させるプロジェクトを開始した。 Siemens Energyの最高情報責任者(CIO)キアン・モッサネン氏は、移行先のインフラとしてGCPを選んだのは、Googleの持続可能性に関する取り組みだけが理由ではないと言う。「クラウドサービスへの移行によって可用性とスケーラビリティを実現させるだけでなく、当社の想定を超えて事業が成長するよう促してくれるパートナ
航空業界で脱炭素への取り組みが求められるなか、成田空港に空港としては世界最大規模となる巨大な太陽光パネルが設置されることになり、空港内で消費される電力のおよそ4割を賄うことができるようになるということです。 成田空港会社は空港の脱炭素の取り組みを進めるため、東京ガスと共同で空港にエネルギーを供給する新会社「グリーンエナジーフロンティア」を設立しました。 新会社では2045年度末までに滑走路脇や敷地内の建物の屋根などおよそ200ヘクタールに180メガワットの太陽光パネルを設置する計画です。 空港会社によりますと、空港としては世界最大規模で一般家庭およそ7万世帯分の電力に相当し、成田空港で1年間に消費される電力のおよそ4割を賄うことができるということです。 会社では、太陽光パネルの設置に加えほかの発電施設の建設なども含め今後、およそ1000億円規模の投資をすることにしています。 成田空港会社は
「COP28」は日本時間の30日午後からUAEのドバイで始まり、12月12日まで開かれる予定で、190を超える国と地域が参加する見通しです。 今回のCOPでは、気候変動対策の枠組み「パリ協定」の目標達成に向けて温室効果ガスの削減など世界全体の対策の進捗を5年に1度、評価する仕組み「グローバル・ストックテイク」が初めて行われます。 国連は、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べ1.5度に抑えるためには各国の削減目標が不十分だと指摘しています。 「グローバル・ストックテイク」を踏まえ、対策の強化につなげられるかが焦点で、再生可能エネルギーの拡大や石炭や石油といった化石燃料の段階的な廃止などが議論される見通しです。 また、世界各地では大規模な洪水や記録的な猛暑が相次ぎ、気候変動による被害が深刻化しています。 前回のCOPでは、とくにぜい弱な途上国を対象に気候変動による被害「損失と損害」に特化した
米国の思想家、環境活動家として知られるレスター・ブラウン氏が、米国アリゾナ州の砂漠地帯に風力、太陽光発電設備を設置の上需要地に送電を行い、電力需要が落ち込む時には余った電気を使い水を電気分解(電解)し水素に転換、貯蔵すれば良いとの考えを述べていたことがあった。残念ながら、このアイデアの実現は現時点ではコスト面から難しい。日照時間も長く、風量もあり再生可能エネルギーの発電コストが低くなったとしても、余剰電力による稼働では電解設備の利用率が低くなる。つまり、いつも発電できない再生可能エネルギー利用では高額な電解設備の単位当たりの減価償却費が高くなるため製造した水素のコストも高くなってしまう。 水素をロケット用燃料に初めて使用した米国政府も、徐々に水素に関心を失い最近ではエネルギー省も水素技術関連予算の減額を続けていた。だが、バイデン次期米大統領は、今後4年間で2兆ドルをインフラ、エネルギー分野
日本は燃料電池車(FCV)や家庭用燃料電池を普及させ水素の利用を促すが、世界の方向性は少し異なっている。 欧州は数年前まで水素社会には熱心でなかった。その理由の一つは、運輸部門の脱炭素化をFCVではなく電気自動車(EV)主体で実現しようとしているからだ。FCVの車両本体価格はEVより高く、また水素充填ステーションの設置費も高いことから、欧州はEVを自動車分野の脱炭素の本命と考えている。FCVに対応できない一部欧州自動車メーカーもEVには対応できることも、EV本命の背景にはある。 しかし、今年2月、ドイツ連邦政府が水素戦略の原案を発表するなど、欧州でも水素利用が本格的に検討され始めた。欧州企業が水素利用の可能性を見いだそうとしているのだ。さらに、欧州が掲げる「2050年温室効果ガス純排出量ゼロ達成」に水素が大きな役割を果たすことが認識され始めたこともある。 ドイツでは鉄道網の40%を占めるデ
吉野氏は、ブルームバーグとのインタビューで「再生可能エネルギーの普及には蓄電システムが必須だが、新たに導入すればコストが上昇する」と述べ、EVを移動手段のみならず、車に蓄電されたエネルギーを電力網へ供給する技術(V2G)の開発を同時に進めることで、再エネの発電コストの上昇抑制につながると強調した。 太陽光や風力などの再エネは天候により発電量が大きく左右されることから、蓄電設備を併せて整備する必要があるとされている。 吉野氏は、人工知能(AI)やあらゆるものがネットにつながる「IoT」など新技術が自動車産業と融合し、2025年ごろから本格的な変革期を迎えると想定している。特にEVによる完全自動運転が始まれば、車が自ら放電や充電の必要性を判断して適切に移動できるようになり、車を使った新たなビジネスの創出にもつながるとみている。 吉野氏は「電力が余っているという情報があればすぐに充電に回るし、電
地球の環境を考え、今、脱炭素への取り組みが加速している。 そうした中、日本人に欠かせないある食べ物が、環境に寄り添う新たな材料として注目されている。 千葉県の幕張メッセで開かれた展示会。 大勢の人で、ひときわにぎわっていたのが、こちらのブース。 展示されているのは、スプーンやフォーク、ストロー、さらにはボールペンなど、日常にありふれた商品だが、実は“ある秘密”が隠されている。 スタッフ「(ブースの特徴は?)ライスレジンという国産のコメをベースにした、バイオマスプラスチックを紹介している」 コメから作られたプラスチック「ライスレジン」。 地球温暖化や海洋汚染の原因とされる、石油由来のプラスチックに代わる、環境に優しい材料として今、注目されている。 コメを使った理由について、開発者は。 株式会社バイオマスレジンホールディングス代表取締役CEO・神谷雄仁さん「無駄になってしまうコメがたくさんある
「実はCO2削減によく効く、熱エネルギーの低炭素化」でもご紹介したように、産業における熱エネルギーを使ったプロセスはCO2の排出量が多いという課題があります。こうした産業部門の中でもCO2排出量で多くの割合を占める「鉄鋼業」において、現在技術開発が進められている、「水素活用還元プロセス技術」という低炭素化の試みについてご紹介します。 日本における鉄鋼業のCO2排出量と省エネポテンシャル 鉄鋼業は、自動車や情報通信機器、産業機械など、ほかの産業の基盤となる基幹産業であり、製造業の上流行程にあたる産業分野です。その国内総出荷額は約18兆円、従業員数は約21万人にものぼります(2015年時点)。製造業全体の名目GDP(国内総生産)に占める割合は3.2%、金額にすると約3.5兆円です(2015年時点)。
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