久しぶりに少女小説の大家・吉屋信子の『徳川の夫人たち』を再読しました。続編とあわせて四冊。吉屋がその最晩年に執筆した歴史小説です。正編では三代家光の側室、お万の方・永光院(1624-1711)、『続・徳川の夫人たち』の前半では五代綱吉の側室・右衛門佐(1650-1706)*1を主軸にして物語が展開します。 *1:「うえもんのすけ」と振るのが多いのだけど「う」は慣習上、たぶん抜けて「えもんのすけ」になりそうな気がする ところでさすが吉屋というべきですが、この小説における主役女性陣はいずれもみな、いわゆる〈大奥〉っぽい雰囲気がほとんどない。女同士のやり取り、ただし男との関係を主軸にした――を描くというのが〈大奥物〉の常道ですが、本作ではその「男との関係を主軸にした」という条件節がすっぽり抜けているのです。 本作においては、江戸城大奥はほとんど〈女子校〉であり、その〈女子校〉においてお万の方と右
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