宮崎駿のイノセント・ガーデン 宮崎駿も黒澤明も円谷英二も”飛ぶ夢”を見た。 だからかもしれないが、その夢に集大成的にこだわった本作は、どこか黒澤明のようであり円谷英二のようである。 樋口真嗣監督が看破したように、これはさながら生涯飛行機に執着した円谷英二の幻の企画「日本ヒコーキ野郎」の映像化とも言えそうな企画だ。主人公の二郎は、実際にも飛行機で空を舞うし、夢のなかでは憧れの師カプローニとともに始終宙を浮遊している。 物議を醸した4分に及ぶ予告篇では、今どきのお客さんが好みそうなセンチメンタルな雰囲気(いわゆる”泣ける映画”的な)が張り出していたが、実際の映画は幸いにもそういうものではない。ひたすらに”飛ぶ夢”に憑かれた二郎の幼少から青年に至る季節を、涼しいまなざしで描き続ける。職業的声優でない庵野秀明氏の優しくも芯のある声が、この二郎のものづくりへの傾倒を静かに語るタッチにいたくなじんでい