自分の話をさせてもらうと、 付き合っていた女をメロメロに愛していたとき、いつ何を話したか、何をしてもらったか、何をしてあげたか、何が好きで何が嫌いか、もらった手紙に何が書いてあったか、借りた漫画で一番好きだったコマは何ページだったのかといった要素を記憶していた。 自分でも驚異的な記憶力が発揮されていた。 多数の言葉のやりとり、モノの貸し借りについて、してもらった分お返しするという意識が高まっていって、いまなんぼ「貸し借り」があるのか、その程度を常に非言語的に感じ取っていた。 その「貸し借り」がなぜなのか、記憶を辿って、これこれこういう経緯だったな、と説明することも可能だった。 増田の言葉でいう「ギブアンドテイク回路」が形成された。 その女とは駄目だったが、形成された「ギブアンドテイク回路」は、副産的にいつも動くようになった。 人間は生まれた時点で完成しているのではなくて、条件によって後から
