買い物帰りの俺の横を走り抜けていった子供は、さきほど通り過ぎたまんじゅう屋に駆け込んでいったようだ。『ようだ』というのは後ろを振り向いて確認するほど子供の行き先に興味がなかった俺は、彼の足音が我が背後で減速しつつ何処かへ消えたことからそう判断したという事だ。しかし、まんじゅう屋に入った子供が元気よく「おまんじゅうはありますか?」と叫んだ瞬間、俺は思わず振り返った。いや、あるだろう。ないわけがない。むしろ、そのためだけに存在している建物だぞ、おまんじゅう屋さんは。 まあ、会話を円滑にするために分かりきったことを聞くのはおかしなことではないからな。例えば「くださいな」と言いながらお店に入った時、店主が「お断りだ」と答える事はないだろう。「はいはい、何にいたしましょう」とでも返事をして、それに対して客が「じゃあ、○○をください」とでも答える。これで取引はスムーズに進むというわけだ。 しかし、饅頭