2年にわたって書店を巡り歩いた記録である。というと、苦境にあえぐ業界にあって奮闘している店主らの姿を活写した内容だと思うだろう。ところが、意欲的な試みでメディアに取り上げられていた書店すら閉店を余儀なくされるというショッキングな話が冒頭から出てくる。そうした消えゆく「街の本屋」がいくつも紹介される。 全国の書店数はピーク時からほぼ半減した。それらすべてに店主や関係者の物語があるわけだ。 「進むも地獄、退くも地獄です」 という廃業の実態が丁寧な取材をもとにつづられていく。 素人考えだと、立地さえ良ければ儲かるだろうと思うが、そういうものではないらしい。駅ナカ書店のような好立地でも、繁盛している店には他人にはわからぬ努力がある。「平台は本の高さが大事」であり、「ディスプレイ次第で、その本の本来の力以上に売ることができ」るのだそうだ。 「その店長は一日中、棚にさわっていた。(中略)店が終わる時間