荒涼とした砂地に広がる朝焼けの空は澄み切っていた。2012年、サハラ砂漠の交易で栄えた西アフリカ・マリの世界遺産の町トンブクトゥ。「止まれ! 何を運んでいるんだ」。土壁の家が並ぶ市街地を出た直後、イスラム教徒のモハメド・トゥーレ(33)が乗る小型トラックが、機関銃を持った男らに止められた。国際テロ組織アルカイダ系の過激派だ。 過激派から逃れる約10人の住民の中に、トゥーレが紛れ込んでいた。荷台に積んだ金属の箱には、過激派が敵視する何百年も前に書かれた千冊以上の貴重な古文書。見つかれば殺される。トゥーレは「洋服だよ」と戦闘員らと雑談し話題をそらした。 「行っていいぞ」。鉄のゲートが開けられると、ほっとして全身から汗が噴き出た。トゥーレにとって、30回ほど続く首都バマコへの古文書移送作戦の始まりだった。 過激派から貴重な古文書を守る移送作戦を指揮したアブデル・ハイダラ。古文書の多くは穴が開いた
![命を懸けた古文書移送 知の源、アフリカ人の魂 マリ](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/e4a707332607a8444212a0e3f8493fba842df654/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fwww.47news.jp%2Fview%2Fpublic%2Fphoto%2F97f18a4341a5dfa8abd2d9295249e0f6%2Fphoto.jpeg)