震災を機に、津波の生態系への影響を新たな研究テーマに選んだ八重樫さん=仙台市青葉区の東北大環境保全センター実験室 ◎サンプル失い、独留学へ 一番なくしたくないものを失った。 研究素材である水生昆虫のDNAサンプルだ。実験室の「ディープフリーザー」と呼ばれる冷凍庫に保存していた。 マイナス80度。解ければ、研究素材としてはもう用を成さない。東日本大震災の停電で駄目になった。 「研究者への道が一気に閉ざされる思いだった」。東北大大学院工学研究科で土木工学を専攻する博士課程2年の八重樫咲子さん(25)=北上市出身=は言う。 仙台市青葉区の同大青葉山キャンパスも3月11日、地震で多くの研究棟の設備や機器が壊れた。 「諦めが悪い」と人に言われる。「いったん転んでからが真骨頂」と自分でも思っている。今が、そのしぶとさを発揮する時だ。 「不謹慎だとも思うが、震災をチャンスに変えないと。大津