2013年09月30日 12:43 長谷川晶一『夏を赦す』|野球の本棚 Tweet 東京へ向かう車中で読了。何度か泣きそうになった。 日本ハムのエースだった岩本勉は、阪南大学高校(旧大鉄高)時代から傑出した投手だったが、下級生の不祥事のために3年生の夏は予選にも出場できなかった。そのときのチームメイト、同級生や先輩、後輩のその後の人生を描いている。 長谷川さんはいつもビデオジャーナリストのように、取材の過程そのものを時系列で追いかけ、描写していく。その手腕は確かで、読者は安心して後ろから付いていけばいいのだ。 長谷川さんは「これが運命の分かれ道だった」とか「結果的にはこれが命取りだった」のような時間を飛び越えた表現をほとんど使わない。 司馬遼太郎など、歴史小説家の作品を読むと、こうした表現が数多く出てくるが、これは作家が物語を俯瞰していることを意味している。いわば「神の視点」で物語っている