ありのままの不自然 「ありのままでよいのです」とか「ありのままの私を見てほしい」という言い方を、時々耳にすることがあります。そのたび、私はいつも、わかったような、わからないような、妙な気持ちになってしまいます。いったい、「ありのまま」とは何か、どういう状態なのか? 少なくともそれは、やりたい放題のわがまま勝手、無遠慮・野放図の行いを言うわけではないでしょう。「よい」と言うぐらいですから。 このとき、「よい」だの「見て」だのと言う以上、言う方は「ありのまま」がどういうことを意味しているのかわかっているはずです。 しかし、わかると言うなら、それは「ありのままでない」状態との区別ができる、という意味でしょうから、もはやそれは概念です。だとすれば、「ありのまま」とは「特定の概念に規定された状態のまま」ということになるでしょうから、これはどう見ても、「ありのまま」という言葉で人が言いたい意味とは違う