クという名前のねずみがありました。たいへん高慢でそれにそねみ深くって、自分をねずみの仲間の一番の学者と思っていました。ほかのねずみが何か生意気なことを言うとエヘンエヘンと言うのが癖でした。 クねずみのうちへ、ある日、友だちのタねずみがやって来ました。 さてタねずみはクねずみに言いました。 「今日(こんにち)は、クさん。いいお天気です。」 「いいお天気です。何かいいものを見つけましたか。」 「いいえ。どうも不景気ですね。どうでしょう。これからの景気は。」 「さあ、あなたはどう思いますか。」 「そうですね。しかしだんだんよくなるのじゃないでしょうか。オウベイのキンユウはしだいにヒッパクをテイしたそう……。」 「エヘン、エヘン。」いきなりクねずみが大きなせきばらいをしましたので、タねずみはびっくりして飛びあがりました。クねずみは横を向いたまま、ひげを一つぴんとひねって、それから口の中で、 「ヘイ