宇宙論入門 [著]佐藤勝彦[掲載]2009年2月8日[評者]尾関章(本社論説副主幹)■宇宙はなぜ、こんななのか 宇宙の運命を牛耳る黒幕は文字通り暗黒の物質と暗黒のエネルギーらしい。世紀末に現れたこの見立ては観測にもとづく。「宇宙論は、今はっきりと、『論』から『学』となった」のだ。 論を観測で試す時代の宇宙像を、円熟の物理学者が自らの半生を踏まえて語る。 著者は約30年前、宇宙は誕生直後に急膨張したという理論を発表した。同様の理論を唱えた米国の研究者は、急膨張で宇宙は平らになったと踏み込んだ。平らとはイメージしづらいが、宇宙の未来にかかわる空間のありようだ。 著者も同感だったが、当時の観測を踏まえるとそうは主張できなかったという。平らでも矛盾がなくなったのは世紀末に暗黒エネルギーなどの優勢がわかったからだ。「今から見ればたいへん悔やまれる」の一言に実感がこもる。 宇宙論探究は、この宇宙はなぜ
・マインド・ウォーズ 操作される脳 本書が紹介していくDARPA(米国防総省国防高等研究計画局)の最先端脳科学研究は、人間の脳を意図的に操作する可能性を探っている。脳科学の可能性を示す、興味深い研究事例が次から次に出てくる。 ・思考を読み取る技術 ・思考だけで物体を遠隔操作する技術 ・電子的、薬物的な認知能力の強化 ・恐怖や怒りや眠気を感じなくする技術 ・敵の脳に影響して戦闘能力を奪う化学物質 ブレイン・リーディング、ブレイン・コントロール、ブレイン=マシン・インタフェースなど脳を操作するテクノロジーの最先端がどうなっているかを、大統領倫理委員会のスタッフをつとめた科学者がレポートする本である。 実験マウスのレベルでは脳に電極をつけることで体を無線制御することが可能になっているらしい。脳画像解析によって何を考えているかを機械が判断する技術も、思い浮かべた数字を当てるくらいならば実現されつつ
ブラックホールで死んでみる [著]ニール・ドグラース・タイソン[掲載]2009年1月25日[評者]瀬名秀明(作家、東北大学機械系特任教授)■豊穣な科学の旅に誘う宇宙論 いまにもダンスを踊り出しそうな著者近影、「存命中の最もセクシーな宇宙物理学者」なる呼び声にこのタイトル。なんだ、ふざけた科学読み物かと勘違いした方も、読み進めるうちにきっと瞠目(どうもく)し、わくわくしてくるに違いない。著者はアメリカ自然史博物館が発行する有名な科学雑誌に、『パンダの親指』などで知られる古生物学者グールドと11年間も共にエッセーを連載して、科学ライティングの腕を競い合った好敵手。まさにアメリカの科学エッセーの王道をゆく面白さなのだ。 以前の共著『宇宙 起源をめぐる140億年の旅』の終章をほぼそのまま第1章に掲げる本書は、前著より読みやすく、しかもさらなる広がりを持って私たちを豊穣(ほうじょう)な科学の旅に誘う
目次 2009年1月31日 - 土曜日 / 2009年1月30日 - 金曜日 / 2009年1月29日 - 『数学ガール』と『数学ガール/フェルマーの最終定理』がダブルで増刷になります / 木曜日 / 2009年1月27日 - リファクタリング入門 / 火曜日 / 2009年1月26日 - 月曜日 / 2009年1月25日 - 日曜日 / 2009年1月24日 - 土曜日 / 2009年1月23日 - 金曜日 / 『プログラマの数学』が増刷になります! / オバマさんの演説 / 2009年1月22日 - 木曜日 / 2009年1月21日 - よよPさんの「数学ガール」の着うた(R)/着うたフル(R)がドワンゴさんから配信中! / 水曜日 / 2009年1月20日 - 火曜日 / 2009年1月19日 - 月曜日 / 2009年1月18日 - 週刊東洋経済の書評欄に『数学ガール』が載る予定
マインド・ウォーズ 操作される脳 [著]ジョナサン・D・モレノ[掲載]2008年11月30日[評者]香山リカ(精神科医、立教大学現代心理学部教授)■軍事利用目的で進む驚愕の研究 「これは、SFではない」という帯のコピーがすべてを物語る、恐るべき科学読み物。 脳科学ブームが続いているが、実用はまだ先、と思っている人もいるのではないか。ところが、それは間違い。アメリカ国防総省の研究機関であるDARPAの最先端脳研究を解説した本書は、すでに最新の脳科学研究で人の脳を電気的、化学的、物理的に操作することがほとんど実現可能、という驚愕(きょうがく)の事実を明らかにしていく。それはたとえば、「脳の活動を完璧(かんぺき)にモニターする」「眠気を感じず寝ない、あるいは冬眠し続ける」「脳に完全な記憶貯蔵システムを作って忘れない」「つらい記憶を消去する」「頭で考えるだけでマシンを動かす」といったことだ。 では
→紀伊國屋書店で購入 「スーパーエンジニアが脳を解明!」 脳関連の書籍が激しい勢いで多数出版されているが、脳の知性を実現する実装手法まで示唆したものは少ないだろう。 本書の著者Jeff Hawkinsは、圧倒的シェアを誇る携帯端末「Palm」の生みの親であるスーパーエンジニアである。いわゆる人工知能を駆使した文字認識システムの出来の悪さに驚いて、Palm搭載の標準文字入力手法である「Graffiti」を2日で開発してしまったほどのハッキング力を持ち、Palmマニアからは神のように尊敬されている好人物である。そのような究極の成功者であるエンジニアが何故突然脳の研究を始めたのかと思ったら、実は順番が逆で、学生時代から興味があった脳の研究を好きなだけ行なえるようにするために携帯端末ビジネスを立ち上げて大成功させたということらしい。凄すぎる! さて、Hawkins氏の理論によれば、知能の源泉は脳の
→紀伊國屋書店で購入 「科学の歴史を楽しく学ぼう」 広い範囲にわたる科学の現状や発見の歴史について楽しく学ぶのに絶好の本である。 技術を扱う仕事をしている理系の人間でも、 「原子の中身はどうなってるの?」 「宇宙の果てとかビッグバンとかってわかってるの?」 「地球の中身はどうなってるの?」 「バイオって流行ってるみたいだけど何が面白いの?」 といった質問全部にちゃんと答えられる人は少ないだろう。 本書を読めば、 このような様々なテーマの研究の現状や歴史について楽しく学ぶことができる。 量子論から宇宙論、生命に到る広い範囲について、 人類が知っていること「すべて」を解説しようというのは 壮大で無茶な試みに聞こえるし、 実際買うのを躊躇するほど厚い本なのだが、 教科書的な無味乾燥さを全く感じさせることなく 科学者の人間模様や発見の歴史を魅力的に描きながら 幅広い分野の基本的な知識を解説すること
目次 2008年11月30日 - 日曜日 / 2008年11月29日 - 土曜日の夜 / 土曜日 / 2008年11月28日 - 階段の上り方クイズ / 私信 / 『数学ガール』コミックスが増刷(!) / 2008年11月26日 - 『数学ガール』コミックスが大変好評のようです / 2008年11月25日 - 火曜日 / 2008年11月24日 - 月曜日の夜 / 月曜日 / 2008年よかった探しリース / 2008年11月20日 - 木曜日 / 2008年11月19日 - 『数学ガール』コミックスの表紙が到着しました / 2008年11月18日 - 数学セミナー1月号にインタビュー記事が載ります! / 2008年11月17日 - 月曜日 / 2008年11月16日 - 書籍『ゲノムと聖書』 / 土曜日 / 2008年11月14日 - 金曜日 / 『新版暗号技術入門——秘密の国のアリス』
もっとも美しい対称性 [著]イアン・スチュアート[掲載]2008年11月9日[評者]尾関章(本社論説副主幹)■数学者たちの格闘に見る宇宙の真理 恋物語を読んでいて、男女を入れ替えてみる。遊び心で、そんな思考実験をしたことはないだろうか。A美をA太に、U太をU美に置き換える。男女雇用機会均等法もあってかなりのところまではうまくいくが、A太がU美の子を身ごもる段になって破綻(はたん)する。 対称性の破れとは、そのようなものだ。置き換えても同じ話が成り立てば対称、ダメならそれは破れている。 この言葉が、ことしほど世間の耳目を集めた年はあるまい。南部陽一郎、小林誠、益川敏英の3氏に贈られるノーベル賞のおかげである。それを予感してか、あるいは偶然か、対称性をめぐる良書の刊行も相次いでいる。レオン・レーダーマンほか著『対称性』(6月1日付読書面で紹介)などを追うように出たのが本書『もっとも美しい……』
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く